2006年11月

平成18年11月28日(火)
第183号   「児童虐待 佐賀県ならどうする」

いじめや児童虐待という暗いニュースが飛び交うなか、先日、児童相談所の所長と話をする機会があった。正確に言えば、僕が呼んだのだ。京都の児童虐待のケースについてメディアでは児童相談所の対応が問題視されているが、本当にそうなのか、児童相談業務に携わっている者としてどういう感想を持っているかを聞きたかったのだ。

以下、所長とのやりとりだ。

古川 こういう対応を児童相談所がするということが佐賀県でも起こり得るでしょうか?
所長 佐賀県ではあり得ません。京都の児童相談所の対応に問題があったと思います。
古川 京都府と佐賀県ではどう違うのですか?
所長 そもそも虐待の通報があれば、佐賀県では48時間以内に子どもの様子を確認することにしています。特に幼児の虐待通報では、内容によっては直ちに家庭を訪問し、子どもの安全確認をします。子どもと面会できない場合は、何度も訪問して児童相談所と保護者の関係をつくるとともに、地域の見守り体制をとるということを最低限やります。
古川 それは必ずですか?例外のほうが多いとかそういうことはないのですか?
所長 必ずと言って良いと思います。特に今回の場合、あの家のお姉さんが児童養護施設に預けられているわけです。一人の子どもを虐待した保護者は、二人目も虐待する可能性がほかの家よりも高いと思わなければなりません。また、6月頃に様子を見たら大丈夫だったからということで大丈夫だと思ったというコメントもあったようですが、子どもの様子は数ヶ月で大きく変わります。さらに、その後何度も通報があっています。虐待の通報があったら必ず子どもの様子を確認するということが何より必要なのです。子どもの様子を見ずして判断することはあり得ません。
古川 その虐待の通報に間違いはないのですか?虐待だと思って通報してみたら、そうではなかったというケースが結構あるんではないでしょうか?
所長 いや、そうではないです。9割とは言いませんが、7割から8割がたは通報があった場合、やはり児童虐待があっています。学校に行っている子どもや、幼稚園や保育所に行っている子どもならばそこに出かけていって様子を確認することもします。もちろん今回のケースもそうでしたが、児童虐待の場合、家の外に出さないというケースもあります。そういう場合問題ですが、とにかく私たち佐賀県では、通報があったら、市や町と連携して必ず現場を確認するということをやるようにしています。
古川 でも、権限がないと家に入れないんじゃないですか?
所長 ですから、どうしても調査をする必要があると判断したときには、警察官と一緒に行きます。
古川 家にいるかどうかというのはどうやって確認をするんですか?
所長 それはあらかじめ家の様子を見て、電気がついているとか、近くの人に様子を聞いたりして、実際にいるということを確認してから行きます。
古川 ドアを開けてくれるんでしょうか?
所長 開けてくれないケースもあります。開けてくれても「散らかっているから」と言われて、家に入れていただけないケースもあります。
古川 そういう場合はどうするんですか?
所長 子どもに呼びかけてみます。二階から声がしていたりすることもありますし、まず、声だけでも聞かせて欲しいということをお願いします。声だけでも聞けば、無事かどうかの確認はできて、ある程度は安心できます。
古川 その日はそれで帰るんですか?
所長 その日は帰ります。でもそうやって何度も何度も訪れていくことによって、とにかくいつか顔を見るということを実現していくということにつながります。その間、佐賀県では、児童相談所と市や町を含めた関係機関でケース検討会議を行い、見守り体制をつくります。京都の児童相談所は保護者との信頼関係を大事にしたかったと言っていますが、確かに、信頼関係を保っていくことは大事です。それがないと結局はこどもに接触できないこともありますので。ただ、大事なことは、保護者との信頼関係をつなぎとめておかなければならないのは子どもを守るためということです。ただ単に親と仲良くすることは私たちの目的ではないと考えるべきだと思います。

何を聞いても、的確な返事がかえってくる。もちろん、だからといって佐賀県では児童虐待はあり得ないとは思わない。そもそも、近年、法律が改正されて児童虐待の通報先に「市町村」が加えられた。事実、児童虐待の県庁での通報処理件数は、平成16年度が126件、17年度が85件、そして、18年度は9月末現在で59件という状況になっているのに対し、市町村での通報処理件数は、17年度164件、18年度8月まで105件と増えてきている。こんなに市町の役割が大きくなってきているのだ。そこで僕はたずねた。

古川 県内の市や町の体制はどうなっているんでしょうか?
所長 そこなんです、問題は。

答えがやや曇った。

所長 もちろん一所懸命に取り組んでもらっているところもありますが、なかなか追いつかないところもあります。どうしても小さい規模の市や町では、そこまで手を回す余裕がないということのようです。虐待を受けている子どもをはじめとした要保護児童をなるべく早く発見することや適切に保護していくためには、関係機関のネットワークが重要で、これから要保護児童対策地域協議会を市や町ごとにつくることになっています。県内23市町中、現時点で12市町。これを増やしていかなければならないと考えています。

市町村の仕事は本当に幅広い。何から何までひとつの役場の中でやっていかなければならないのは大変だというのはよく分かる。でも、是非とも佐賀県内の全市町で1日も早く、関係機関相互のネットワーク(「要保護児童対策地域協議会」)が設置されるようにしなければならない。そう強く感じた。

時計を見た。20分経っていた。たった20分だったけれども、とても内容の濃い20分だった。やはり現場には神が宿っている。

ふるかわ 拝

平成18年11月21日(火)
第182号   「堀本さんの死]

11月11日の深夜、なんとなくNHKをつけていたら、「カンボジアでNPO団体の職員が交通事故により死亡」というニュースのヘッドラインが目に飛び込んできた。
「カンボジア」と「NPO」のふたつの言葉の組み合わせに、僕は身を乗り出して詳細に見入った。 
僕は、92年に成立したPKO法を受けての最初のPKO活動であるアフリカのアンゴラでの選挙監視に支援スタッフとして参加し、その後カンボジアでの選挙監視にも支援スタッフとして日本国政府から派遣されて参加をした。
当時カンボジアに何度も足を踏み入れ数ヶ月間暮らした。その後も佐賀県内に本拠を持つNPO団体と一緒にカンボジアに出かけたりもしている。佐賀県出身の写真家一ノ瀬泰造さんがアンコールワットの近くで命を落とされたということもあり、カンボジアにはずっと関心を持ち続けているし、そういうこともあってカンボジアでNPO活動をしている人には知り合いが何人かいた。「命を落とされたのは知り合いではないか」。不安がよぎった。
だからニュースに見入った。やはりそうだった。交通事故の犠牲者となったのは堀本崇さん、かつてのカンボジアPKOの仲間だった。
彼はPKOの後もずっとカンボジアでのNPO活動を続けていたのだった。
僕なりにはカンボジアを過去の思い出にせずしっかり自分の中では常に現在のものとしてかかわり続けないといけないという気持ちでいたが、彼の死の前に恥ずかしくなった。
彼はずっとカンボジアのために働き続けていたのだ。

アフリカのアンゴラに行く前に、世界各地で駐在員の経験を持つ商社の人と話をしたことがあった。
古川  :アフリカでは何に注意すべきでしょうか。
商社マン:風邪と交通事故ですね。
古川  :伝染病とかよりも、ですか?
商社マン:アフリカは暑いところというイメージがありますが、朝夕の温度差が大きいんです。だから風邪を引きやすくなります。マラリアやほかの伝染病のように予防薬というのもありませんし。交通事故も多いです。戦争が終わって、車が増えてきています。でも運転技術はまだまだですし、免許制度もきちんとしていません。そもそも交通ルールを歩行者もドライバーもあまりよく自覚していないので、どうしでも事故が多くなるのです。
古川  :歩道のあるところは歩道を歩けば大丈夫でしょうか
商社マン:そうとも限りません。車同士でぶつかると部品代が高いため修理代が高くつきます。むしろ、人のほうが安いということもあります。だから、車同士の事故を避けるために歩道側にハンドルを切るということもあるのです。
そしてその方はこう付け加えられた。
商社マン:これはアフリカだけではありません。発展途上国によく見られます。

その注意にもかかわらず僕はアンゴラで車に乗っていて2回交通事故に遭った。
そのときの衝突のせいでいまでも左の肩は少しおかしい。マラリアや黄熱病にはかからずにすんだが彼の言葉は正しかった。

今回の交通事故も、堀本さんがオートバイを運転していたところ、一方通行を逆送してきた3人乗りのオートバイと正面衝突したのだという。

堀本さんのご冥福を心からお祈りしたい。

ふるかわ 拝

平成18年11月14日(火)
第181号   「全国豊かな海づくり大会を終えて」

「全国豊かな海づくり大会」とそれに引き続いての行幸啓が先日無事に終了した。これについての感想はあちこちで書いているのだけど、この「週刊yasushi」の中でも述べておきたい。

この4日間の日程の間、僕はずっと両陛下に「随従」していた。まことに光栄だった。
「随従」というのは、要するにくっついて歩くことだ。おじゃまにならないように、でも何かあったときのために、つきすぎず、かといって離れないように、しかも、お出迎えの方や報道機関に人たちと両陛下の間に入ってしまうと視線を遮ってしまうことになるのでそうならないようにする、というのは意外と難しい。
「意外と難しい」というのはちょっと遠慮しすぎかもしれない。
ただでさえ、極度の緊張の中にある中、これみよがしではなく、さりげなくそういう行動を取るというのは相当大変で、普段の仕事では、難しい判断を瞬時に迫られてもそれなりには対応ができていると思うのだが、そういう普段の仕事とはまったく違う部分の神経と頭脳と筋肉を使っている感じだった。

でもとにもかくにも無事にそして本当に大勢の方に迎えていただいて行幸啓が終了したのはほっとした。関係されたすべての方々に心から御礼を申し上げる。

僕は毎月県庁全職員向けに「知事室から」というメールコラムを書いている。
その今月の「知事室から」の中から今回の行幸啓の印象を二つまとめてみた。
せっかくなのでそれを紹介して今週の「週刊yasushi」の〆としたい。
(文体は原文のまま)

印象1「災害」
 今回は、「全国豊かな海づくり大会」へのご出席がメインだったわけですが、両陛下とも特に本年度佐賀県が被りました災害について、最初から最後まで終始お心遣いを賜ったことが第一の印象でした。
最初に県庁でごあいさつを申し上げました際、「飛行場から市内に至る沿道の周りに広がる畑や田んぼで塩害を受けた作物が大変多かったようですが、あれが災害の影響ですか」「街路樹も海に面しているほうは塩害を受けていたようですね」などというお話がありましたし、途中の何回かの会食の折りにも災害の話がいろいろ出ました。
 最後は唐津から佐賀に向かうお召し列車の中で、車中から唐津市の湯屋・田頭地区の被災の様子を見たいということで私がご説明申し上げて、車中から地すべり・土石流の様子をご覧いただきました。
 こうしたことを通じて、被災者の方々の一日も早い生活や生産の再建と、来年こそが豊かな実りの年であるようにということを念じておられました。

印象2「多久」と「楠」
 両陛下がおふたりでお話をされている中に「多久」という言葉が何回となく出てきたことなど佐賀県へのお気遣いが感じられたことが第二の印象でした。
皇后陛下のご母堂様のご出身は多久市です。車中で災害の被災地を説明申し上げようとしたとき、天皇陛下から「その場所は多久よりも手前ですか」というご質問がありました。「多久」がひとつの判断基準になっておいでのようでした。
また、佐賀にお越しになった二日目、すなわち海づくり大会当日には、皇后陛下の胸には楠をあしらったコサージュがつけられていました。

こういうことひとつひとつに佐賀県へのお思いやお気遣いを感じる4日間でした。


ふるかわ 拝

平成18年11月7日(火)
第180号   「ローソンとの包括協定」

いささか旧聞に属することなのだが、9月30日にローソンと佐賀県が包括協定を結んだ。ローソン?そう、あのローソンである。そして、それと並んで、その日新しいコンセプトのコンビニエンス・ストアが九州ではじめて佐賀市にオープンした。シニア層をメインターゲットにした「ローソンプラス」である。

コンビニエンス・ストアと自治体が包括協定を結ぶことはまったくないわけではない。ローソンとしても、全国ですでに4県と締結している。ただ、九州では、初めてで、しかも、今回オープンしたローソンプラスには県産品にこだわった常設の売り場がある。県産の農産物や地元県産品販売コーナーが店内にあって、松露饅頭も丸房露も置いてあるし、佐賀県産の野菜もある。こういうコーナーの常設は全国で初めて。うまく使っていただければ良いがと思う。

さらに、この店はお店のトイレがユニバーサルデザインに配慮したものとなっていることやシニアの方がカートを使って店内を行き来しやすいように通路にゆとりをとってもらっている。このほか、店内の休憩スペースには「SAGA NEWS BOX」という掲示板を作ってあって、そこに県からのいろんなお知らせを貼り付けてある。

また、包括的な協定の意味合いとしては、災害があったときに帰宅が困難な方に対して水やトイレを提供することを約束されているし、来年開かれる佐賀・青春総体に対しても協力をしていただくことになっている。

僕と同い年の新浪社長は、「これからは地方分権の時代ですよ」と笑う。
「これまで本社が決めたアイテムを日本全国で売っていました。でも、全国を回ってみて、いかに地域によって違うかがわかりました。その地域で何が売れるかは、地域の人のほうがよくわかる部分もある。やっとそこに気付いたんです。あたりまえのことです。毎日お客様と接しているんですから。だから、   何が売れるんだ、と提案してほしいと言っています。」

「さらに言えば、地産地消という言葉がありますが、私はそれじゃ足りないと思います。地産「他」消、地産「多」消で、地域のものを他の地域で、できるだけ多くの地域で消費してもらうことが必要なのではないでしょうか」。三菱商事の社員として世界を相手にビジネスをしていた人が、今こういう考え方に立っておられる。私たちもこういう気概に応えていきたいと思う。

11月17日には九州自動車道基山(きやま)パーキングエリアに、新しいタイプのローソンがオープンする。基山という場所は、九州のタテのラインとヨコのラインが交差するところに位置するのでとても便利な場所。この基山のローソンでも、県産農産物・地元県産品の販売コーナーやユニバーサルデザインに配慮したトイレ、ゆとりのある通路、「SAGA NEWS BOX」など、片田江店同様のサービスや施設が実現する予定だ。この他にも、リラクゼーションコーナーなど新しいコーナーもある。ぜひ立ち寄ってみてほしい。

ふるかわ 拝