2009年8月

平成21年8月25日(火)
第321号「ほんとのアンテナショップ」

先日、東京で時間ができたのでいくつかの県のアンテナショップに寄ってみた。

その中で、秀逸だと思ったのが福井県のアンテナショップだった。
多くのアンテナショップが東京・銀座地区に位置している中、福井県のアンテナショップ「ふくい南青山291」は南青山のやや奥まったところにある。
カフェやANTEPRIMA(バッグ)のショップが並んでいる瀟洒なスペース(グラッセリア青山)の1階の一角。美容室などもあっていかにも南青山らしい雰囲気の空間ながらほかの店とも違和感がなく、よほど近くまでいかないとそこが福井県のアンテナショップだとはわからないほどだ。
入ってみても空間的にまことにかっこいい。ところせましとモノがわんわん並んでいるという感じではなく、セレクトされた商品が静かに揃えられている。
越前焼や若狭塗はもちろんのことだが、地場の会社が開発した化粧品やシャツもさりげなく置いてある。でも、売り場としては一定の水準が維持されている。
感心したのはそれだけではなかった。

僕はアンテナショップに行ったときには必ずレジの人と話をするようにしている。アンテナショップは情報収集の拠点のはずで、そのスタッフがどれだけの情報をお持ちなのか確かめているのだ。
残念なことに多くのアンテナショップでは有用な情報を提供していただくことがない。
何が売れ筋かは教えてもらえることが多いが、「東京に店を出して意外に売れたものってありますか」と聞いても気の利いた答えが返ってくることはまずない。「東京での反応を見て売り場を変化させたこととか、プロモーションのやりかたを変えた商品ってありますか?」と聞いても同じだ。
東京で毎月数百万円の家賃を払いながらそれでもアンテナショップを各県が作りたがるのは、東京でわが県のものを売りたいという率直な思いから、ということが多いのだと思う。でも本当は、東京では何が売れて何が売れないのか、その見極めを行って、売れるものをそのアンテナショップではなくほかのお店で扱っていただけるようにしていく、いわば卒業生をどれだけ出すか、がアンテナショップの意味なのではないだろうか。ところが多くのアンテナショップでは、そこで物販することだけに力が注がれているケースが多いと思う。
その点、この「ふくい南青山291」はきちんとした対応で気持ちよかった。
「何が売れていますか」とおたずねしたところ、「食品以外でしたら若狭塗ですね。とくにお箸です。食品なら「へしこ」ですが、お勧めは雲丹(うに)で作った醤油です」とよどみない答え。それだけでも気持ちよかったが、僕が「雲丹で作った醤油ですか?」と反応したところ、レジにいたそのスタッフの方がわざわざ「こちらにどうぞ」と案内までしていただいた。もちろん僕が何者か彼女は全く知らない。「一種の魚醤ですからそう思っていただければいいのですが、パスタにかけて食べるというのがおすすめですね。かなり雲丹の香りがします。
もともとはもっと大きな瓶だったのですがこちら(東京)の方はこの商品をご存じない方が多いので、であればもう少し小さいほうが売りやすいのではないかということでこのサイズのものができて、それを置いています」とここまで答えてもらうともう満足ではないか。
こういうのがほんとのアンテナショップだなと感心した。

佐賀県にはまだ東京のアンテナショップがない。作るべきという意見もあれば相当経費がかかることもあって慎重にすべきという意見もある。僕自身はもちろん否定しているわけではないが、どうせやるのであれば後発の利を活かしていいものにしたい、という思いもある。しばらくの間、あちこちのショップをのぞきながらいろいろ考えてみたい。

「ふくい南青山291」http://fukui.291ma.jp/

ふるかわ 拝

平成21年8月18日(火)
第320号「刑務所という現場から」

生まれてはじめて刑務所の中を見せていただいた。佐賀県内にある女性専用の刑務所だったので「プリズン・ブレイク」や「グリーンマイル」に出てくるようなものとはちがっていた。
なぜ刑務所に行ったのかというと「地域生活定着支援センター」の立ち上げのためだった。

実は刑務所にいる人の中には障碍を持っていると思われる人が一定割合で存在している。
その方たちのうち、障碍があるがゆえに出所後に帰る場所がない人もまた存在している。
この方たちが出所した後困らないように、住いの場を確保するお世話をしたり、障碍者手帳の発給などの福祉サービスを利用できるようにして、地域での生活を可能とすることをめざそうという構想が定着支援センターだ。

受刑者の中にどれくらい障碍者がいるのか、これが最近まではよくわからなかった。ここ数年、法務省と厚生労働省で協力して受刑者の中にどういう障碍を持った人がいるのか調査と研究を重ね、ようやくうっすらとではあるが、状況がつかめつつある。
特に問題なのは知的障碍を持っている人への対応だ。知的な障碍があっても、行政が支援の対象とするには行政による認定行為が必要になる。認定を受けさえすれば療育手帳が交付されるのだが、今回381名おられる受刑者の中で知的障碍があると思われる方が32名、その中で療育手帳を持っている人は確認できていないとのことだった。法務省の調査では知的障碍を持つ受刑者のうち、6.3%の人しか手帳を持っていなかったという。

では知的障碍を持っている人がどういう罪を犯したのか。統計では窃盗、詐欺が多い。

たとえば認知症に近い人がどうやって詐欺を働くのかといえばそれは無銭飲食のことだ。窃盗は文字通りかっぱらいだが、現実にはいわゆる万引というケースが多く、本人が支払をよく理解していないこともあるようだ。
そういう障碍を持った人で帰るところ(帰住先)がない人たちが、現実問題として行先がなくて結局また犯罪を犯して刑務所に戻ってきてしまうというケースも多い。

数年前に下関駅が放火されるという事件があった。犯人は知的障碍のある人で、刑務所から出たばかりだった。帰住先がなく、刑務所に戻るために放火したのだった。もちろんやったことは犯罪だが、そこに至る事情を考えると何らかの対策が必要ではないかと思う。
そういうことがあって現場を見てみたい気持ちが強くなり、刑務所に行ってみたのだった。

僕が行った刑務所での生活はこんな感じだった。数人が同居する部屋に暮らし、毎日規則正しく起きて食事を取り、工場に行って仕事をし、(仕事は全国各地の刑務所で使う制服づくりがメイン。なんどもこの刑務所に入っている人は制服づくりの中でも難しい工程を担当するのだという。)、夕方まで働き、夜早めに寝る。つらいことや苦しいこと、つまり苦役を強いられているという感じではなく、「ルールに従って暮らす」ことを身体で覚えることをめざしているイメージだった。
生活は自己完結。食事も洗濯も自分たちでやるし、さらにはヘアーカットも受刑者に職業訓練で美容師の資格を取ってもらって自分たちでやっている。また、高齢の受刑者の中にはサポートの必要な人もいるが、ホームヘルパーの訓練を受けた人がその人と同室になってケアしたりしている。

刑務所で働いておられる職員の方々と意見交換した。そのなかでも職員の皆さんの複雑な想いが垣間見られた。
古川: 帰住先が決まっていない人を送り出すときはどういう気持ちですか?
職員: 私たちにできることは、JRに乗るときに使える割引切符が買える書類を渡してあげることくらいなんです。うまく行ってくれればと祈るような気持ちです。
古川: 出所された後は本人がどうなっているのかはわかるのですか?
職員: 私たちは出所した方たちとは接触してはいけないことになっています。ですから、出所された方との接触は保護関係機関の仕事になります。
古川: 受刑者との関係でうれしいことや悲しいことはどんなことですか?
職員: 悲しいことはいったん出所した人がまた犯罪を犯したことを新聞やテレビで見たときですね。うれしいことはときどき手紙をいただくことです。「元気でやっています、しっかり更生しています」ということが書いてあります。「返事がもらえないことは知っているけれど手紙を書きました」と書いてあるとちょっとつらいですけど、でもよかったなと思います。

僕が公務員になったばかりのころ、刑務所は「きょうせい」施設だと教えられたが、最初のころは「強制」施設なのかと思っていた。今回まさに「矯正」施設なのだということをつくづく感じた。さらには、広く社会で「共生」するための施設になっていってほしいと思った。
そのためにも、刑務所の外の社会にもこの中のようにきちんと落ち着くことの出来る居場所を確保することが必要だとあらためて感じた。社会のためにもそして本人のためにも。
佐賀県では今年の12月に「地域生活定着支援センター」を立ち上げる予定だ。


ふるかわ 拝

平成21年8月9日(日)
第319号「政権公約評価を終えて」

この数週間、全国知事会の政権公約評価特別委員会委員長として忙しい日々を送っていたがやっと一段落した。

先週の金曜日には、全国知事会主催での自民・公明・民主の3党の地方分権政策についての公開討論会が行われ、その翌日にはその公開討論会での議論の状況を含めたところで29人の知事が採点をしたものを合計し、公表した。あくまでも地方分権政策に関して、ということであるが、自民党60.6点、公明党66.2点、民主党58.3点という結果となった。

会見でも申し上げたが、全国知事会は点数をつけることを目的にしているものではない。地方分権政策を政権政党に実行してもらうこと、が目標だ。そのためには選挙の際のマニフェストにできるだけいい内容のものを盛り込んでもらうことが必要で、そのために各党の分権政策について評価し、公表する、ということを宣言したのだった。

その意味では今回はその運動の甲斐あって、前回の衆議院議員選挙では盛り込まれていなかった「義務付け・枠付けの見直し」「国の出先機関の廃止縮小」「直轄事業負担金の廃止」「地方消費税の充実」「国と地方の協議の場の法制化」などがそれぞれ織り込まれたし、マニフェストの字面に表れていないことについても、金曜日の公開討論会で確認することができた。
何よりこれだけ世間の注目を集めたことで、大阪府の橋下知事が言うように「これで言ったことをやらなければ記者会見のたびにうそつき政党よばわりを続ける」ということになるのだろう。

点数の分析をしてみると与党側は財源面では手堅く地方に対して確保していくという姿勢が見えてそこの部分は評価できるし、制度面でも協議の場の法制化や義務付け、枠づけの見直しについても数値目標を示して取り組むことを明らかにしている。
ただ、だとすると、なぜこれまでやれなかったのか、という点が疑問になる。
それに対しては、公開討論会の場で、自民党の菅さん(選挙対策副委員長)は「心を入れかえる」、公明党の山口さん(政調会長)は「反省している。」と述べた。総じて与党側は書いてある中身について、不安感はないものの、果たして本当に霞が関と対決してまでもこのマニフェストを実行できるのだろうか。
その不安がどこまで拭えたのか、ということがポイントだったと思うが、中身に安心感がある分僅差で軍配が上がったように思う。

一方、民主党は制度面や、めざす分権社会の姿は全国知事会と近いところがありながらも、財源面について相当大きな不安があり、公開討論会では僕がその点を全国知事会を代表して主に民主党に対して確認した。その結果、たとえば4年間議論しないと言っている消費税について、地方の取り分の地方消費税については国の取り分である消費税とは別の税であることをきちんと認識したうえで将来的には充実を検討する、ということが示された。また、ガソリン税などの暫定税率を廃止した後も、(ということは自治体財政からみれば減収になる)、きちんと補填する、ことが明確になった。また、一括交付金という地方にとって使いやすい形での交付金の配分も財政力の弱いところに手厚く行うということも明らかになった。マニフェストと公開討論会における議論を総合すると、民主党はそのめざすところについてはより明確になり、財源面での不安も多少は解消されたものの、やはり不安を解消するには至らなかったということだと思う。

でも内容をさらに詳しく見てみると、プラス項目の合計点は自民62.1点、公明68.7点、民主63.8点と、むしろ民主党が自民党を僅差で上回っている。ただ、減点項目である財源確保の不安のところが自民 マイナス1.5点、公明 マイナス2.4点、民主 マイナス5.5点とここで差がついているのだ。

民主党には目指すところはいいのだが財源確保についての不安が残るということで財源確保についての期待を込めた点数結果だったと思う。

この評価結果が出されたことをもって全国知事会として今回の総選挙に関しやるべきことはほぼ終わったと言っていいと思う。
世間はお盆に入るが、僕には県政の中でいろいろやるべきことがある。次はこちらでがんばっていきたい。


ふるかわ 拝

平成21年8月4日(火)
第318号「政権公約を評価する」

先週末の日曜日は、21世紀臨調という民間の機関が主催する「政権実績」検証大会だった。要するに、前回の総選挙で勝利した自民党・公明党のマニフェストがその後、ちゃんと実行されたかどうかを検証しようというもので、僕は全国知事会を代表して参加した。全国知事会のほか、経済同友会、連合、日本青年会議所、日本総研、PHP総合研究所、言論NPO、構想日本、チーム・ポリシーウォッチが参加していて、それぞれがこの4年間の政権実績について評価した。

100点満点だったが総じて政策実績の点数は低かった。連合の点数が30点ともっとも
低く、日本総研38点、言論NPO41点、チーム・ポリシーウォッチ45点、日本青年会議所46点、経済同友会50点、構想日本50点、PHP総合研究所58点。全国知事会は56点をつけた。

比較的点数の高いPHP総研と構想日本、全国知事会は共通点があって、それは「あくまでも2005年総選挙の際の政権公約(マニフェスト)がその後どれだけ実行されたのか」という観点で評価をしたということだ。

何を言いたいのか、というと、その政権公約(マニフェスト)そのものに不満があっても、それはそれとして、あくまでも客観的に「選挙のときに国民に約束した事柄をどれだけ実行できたか」という点だけに絞って評価すると、それなりの高い点が出てくる、ということだ。

一方、低い点をつけた団体は、その政権公約の達成度というよりは、そもそも過去4年にわたって行われてきた政権運営や政権実績に対して評価をする、という傾向が強かったように思う。

たとえば、全国知事会が評価した地方分権改革についていえば地方分権改革に関する与党の政権公約は次の4点に集約できる。

1 平成22年6月までの地方分権一括法の国会提出 
2 一般財源総額確保と財政力格差の是正 
3 地方の意見の尊重 
4 道州制の推進

これらについてそれぞれ達成度合いを見てみると、
1 の一括法の提出については、現在準備が進められていて、すでに政府ではそのための「分権要綱」「出先機関改革工程表」が決定されている。
2 については、参議院議員選挙での与党側の大敗を受けて、その後一般財源総額確保がきちんと行われるようになった。
3 については、地方の意見を聞く場が時折設けられている。
4 については、政府に道州制ビジョン懇談会が設けられている。

と一定の評価はできるのだ。

一方で、

1 については、ここにきて分権推進のスピードが鈍ってきていること
2 については、都市と地方の財政力格差を是正するためとはいえ、都市部に集中する法人事業税の一部を国税としたことは地方分権の流れからみると問題だったこと
3 については、時折地方の意見を聞く程度にとどまっていて、しかもそれが直接政策に反映される保証がないこと
4 については、懇談会は設けられているが、具体的な検討は進んでおらず、法制化への道筋もできていないこと

があり、その点を考えて56点としたのだった。

ただ、どの団体にも共通しているのは小泉内閣の下で作成された政権公約はいままだ有効なのか、という素朴な疑問だった。
小泉内閣の後、安倍、福田、麻生と政権が継承されていったが、結局総選挙は行われなかったため、2005年の選挙の際に示された政権公約以外に国民に対する約束というものは示されていないと言っていい。いま小泉マニフェストを読むと、ひたすら改革、改革と唱えられている。郵政民営化の次に出てくるのは「日本の行政を変える」だし、その中でも規制改革、行政スリム化、国家公務員改革など改革が目白押しで、その次には財政構造改革、社会保障制度改革ととにかく改革のオンパレード。とてもマッチョな感じのマニフェストだ。
今回の自民党の政権公約2009が「安心」から始まり、「国民の安心・安全のための社会保障制度の確立」から始まっているのとは大きく異なる。
この4年の間に大きな政策転換が行われたことは事実で、その転換の際に総選挙が行われなかったということをあらためて感じた。

僕は報告と討論の中で主に2つのことを述べた。

ひとつは、これからは21世紀における「憲政の常道」として、総理大臣が変わるときは必ず総選挙を行うことにしてほしい。そのことをぜひともみんなで訴えていこう、ということ。
もうひとつは、選挙のときだけマニフェストを語るのではなく、マニフェストの進捗を「毎年」や「100日ごと」など定期的に評価するようにしよう、そして政権党がマニフェストを忘れることができないようにしよう、ということだ。

一方、全国知事会主催のマニフェスト公開討論会はいよいよ今週の金曜日となった。テーマは、地方分権にしぼったが、8月7日(金)午後1時スタートで場所は東京・憲政記念館。事前の申し込みは要らないしどなたでも参加できるのでどうぞお越しあれ。


ふるかわ 拝