2010年7月

平成22年7月27日(火)
第369号「アイリス」

毎週水曜日午後9時からTBS系列で放送されている韓国ドラマ「アイリス」を僕は毎週見ている。
もともとは韓国で放送されていて、韓国では平均視聴率が30%を超え、最終回視聴率39.9%、最高瞬間視聴率50.2%を記録したという人気ドラマだった。
そのドラマの制作の際には秋田県でロケが行われ、アイリス人気のおかげでロケ地にはいまおおぜいの韓国人観光客が訪れているという。
そのおかげで、もともと休止予定だった大韓航空の秋田ーソウル(インチョン)線にも好影響が出た。もともと2008年11月には53.6%とかなり低い搭乗率となっていた秋田ーソウル線は、アイリスが韓国で放映された2009年以降数字が急成長し、2009年12月の搭乗率は85.8%と驚異的な数字となり、いったん決定していた休止が延期されたらしい。

もともとこのドラマは、青森県・岩手県・秋田県の3県と北海道が共同でソウルに出している事務所に、制作会社から雪国の風景が撮りたいと、ロケ地のオファーがあったことが始まりという。条件は、スタッフ・キャスト全員分の宿泊先と交通手段の無償提供だった。
どうやって秋田県に決まったのか、というと、秋田県と観光地の人たちが、それらを無料で確保することを約束して選ばれたという。田沢湖畔のホテルの女将さんが、最大の難関であった「3週間80人分の宿泊費」をなんとすべて無償で提供されたそうだ。もちろん秋田県の観光課も動いた。県内企業や団体などに呼びかけて秋田ロケ支援委員会を設立。一口1万円の会費を募って1,500万円の資金を集め、スタッフらの交通費や歓迎レセプションなどの費用をまかなった。

他の県は年度途中の予算確保ができず断らざるを得なかったと聞いたが、このとき秋田県はいっさい予算措置なしで誘致に成功したわけだ。

ロケ当時は当然のことながらこの作品が韓国でヒットするかどうかはわからなかったわけだが、結果的に大ヒットとなったのを見て、秋田県は先日の6月補正予算で3,000万円、アイリスのロケ地のパネル展や今年の秋から放映が決定している台湾での秋田県の宣伝などを盛り込んだ予算を成立させた。
日本のTBSとしてもよくぞゴールデンタイムに韓国ドラマを放送するという決定をしたと感心するのだが、そもそも秋田県にはTBS系列局がなく、実際にはABSという日本テレビ系列の局が、水曜日ではなく土曜日に放送している。ただ、日本での視聴率はさほどではない。TBSで放送されているアイリスの視聴率は7%台と、残念なことにあまり振るわず、ABSの視聴率は初回が1.2%くらい。あまり高くないなあ。
また、秋田県民が「アイリス」の話題で盛り上がっているかというと、どうもそうではないらしい。地元旅行会社がこの夏、県民向けのロケ地ツアーを企画したところ、応募者は約150人ほどだそうで、これを多いとみるか、少ないとみるか、微妙なところだ。しかしやはりというか、ツアー参加者はおもに50代から60代の女性だそうで、「冬ソナ」以来の根強い韓流ファンはここでも健在である。

まあ、国内での人気はともかく、秋田県では、韓国向けのウェブサイトを韓国人が好むデザインやブログ形式にするなど広報戦略にも工夫を凝らし、韓国内での秋田ブームを巻き起こした。
そのアイリス人気を見た鳥取県の平井知事は、アイリスの続編というべきドラマ「アテナ〜戦争の女神」のロケ誘致に成功、約3,000万円の予算を計上した。
鳥取県はじめいくつかの県が名乗りを上げていたというが、その中で自らソウルに飛び、交渉した情熱が功を奏したのかもしれない。
米子ーソウル線も搭乗率がなかなか上向かず、苦戦しているというから、その打開策という面もあるだろうが、何にせよ、何かやらないとダメ、ということなのだ。このようなセンス、行動力がいま求められているとおもう。
僕はドラマとしてのアイリスのファンで毎週楽しみにしているけれど、ロケ地に立候補しようとは思わなかった。
こっちもがんばらんば。


ふるかわ 拝

平成22年7月20日(火)
第368号「地方消費税のアップを求めることは『ひきょうか』」

7月15日は僕の誕生日だった。この日を僕は和歌山で迎えた。毎年、僕は誕生日を出張先のホテルで迎えている。というのも、この時期は、毎年夏の全国知事会議が開かれているからだ。
今年の全国知事会議は、参議院議員選挙の結果を受け、今後、地方にとって必要な政策が実現されていくためにどう行動していくべきか、ということに議論が集中した。
また、地方財政がとにかく厳しく、社会保障関係経費だけで年平均7000億円(都道府県分と市町村分の合計)くらい増えていくことが見込まれるという状況の中、どうしても消費税・地方消費税のアップを含む抜本的な税制改正を実施することが必要という点についても議論が行われた。
佐賀県(佐賀「県」だけで市町村分は含みません)でいえば確認できるだけで毎年10億円くらい福祉・医療関係経費が増えてきている。
高齢者が毎年増えている以上、必要な経費が増えるのはある程度やむをえないのだが、サービスを受ける高齢者ひとりひとりからみればこれまで行われている医療や福祉のサービスが続いていくだけの話だから、毎年サービスが充実してきた、という実感はないと思う。でも支出する側からすると、高齢者の人数が増える分、確実に支出は増えていっている。
その増えていっている額が佐賀県だけで年間10億円というわけだ。
このままではどうしようもない。ということで、去年の夏の全国知事会議で、知事会としてはじめて消費税・地方消費税のアップが必要という提言をまとめた。
今年の全国知事会議でもその提言のアップデイトが行われた。
その議論の中で多くのメンバー知事たちは、消費税・地方消費税のアップやむなしという意見に同調されたが、何人かの知事は慎重意見を述べられた。
大阪府の橋下知事もその中のひとりだった。「消費税アップという政治的リスクを国だけに負わせて、それによりかかって増税を実現しようとするのはひきょうだ」と発言した。
この発言がニュースや新聞に取り上げられたが僕はこれに対してやや違う考えを持っている。
少なくとも僕は「国によりかかって地方消費税のアップを実現しよう」と思ってはいない。ただ、消費税率を変えられるのは国会だけだ。国会で消費税率を変える法律を通してもらうしかない。彼は、「そのシステムを変え、地方で決定できるようにすることを提案すべきだ」と主張する。それは理解できないわけではないし、われわれが目指す理想の自治のかたちがそういうものだと思っている。が、現行システムの中で実現を目指す我々の運動のことを「ひきょう」と言われる筋合いはない。
こちらは国の議論にただ乗りするつもりはない。そもそも税率の引上げの必要性については、去年のいまごろ、三重で開かれた全国知事会議で全国知事会として決議している。そして国の各政党に対して、消費税・地方消費税の税率アップをマニフェストに書き込むように運動し、その結果、自民党が、そして民主党も、消費税についての議論を正面から行うことをマニフェストに書き込むこととなった。
これだけの動きをし、国の各政党に先駆けて消費税・地方消費税のアップについてやむなしと意思決定しているわれわれの動きを、「ひきょう」と断ずるのはいささかお角違いではないかと思う。
消費税・地方消費税のアップを求めるくらいなら、府民税を2倍にせよ、と橋下知事は言う。
であれば、それは実行されたらよかろうと思う。そのことは全国知事会で申し合わせるまでもなく、制度的には大阪府でやろうと思えばできるのだから。
ただ、それをすべての都道府県で実施せよ、と迫るにはもう少し周到な論理建てが必要だし、佐賀県のような所得水準の県では、所得課税を強化しても、税収は大阪府ほどは増えない。それに対して、彼は「大阪府の府民税の半分はほかの県のために拠出してもいい」と言う。これも道州制や自治の理想形としてはそういうこともありうると思うが、いかんせん、3年前にそのような議論がおきたときに、東京都や愛知県、大阪府(当時は橋下知事ではなかった)は「ほかの県に拠出するのは大反対」という論陣を張ったことを考えると、現時点ではそういうシステムがないし、システムができるような状況にはない。
われわれは現実の財政危機に直面している。必ず実施しなければならないサービスは毎年着実に増え、支出カットは職員の給与カットを始めやってきている。(国家公務員は悪いことでもしない限りは給与カットされないが、地方公務員の多くは悪いことをしたわけでもないのに給与カットされているし、知事の給与も、47人分合わせても1人のカルロス・ゴーンに遠く及ばない。)
橋下知事の気持ちはわかるが、現実の財政危機を克服するためには現実的な提案が必要だと思う。
9月の民主党の代表選までは一種の政治休戦になるだろう。それからが秋の陣の始まりだ。
ねじれねじれというが、地方政治の舞台では、首長と議会との意見が異なることはときどきあることだ。首長の提案した議案が否決されることもあれば、議会内調整や議会と首長との調整によって内容が修正されることもある。混乱も時にはあるが政治の成熟もまたあると思う。
中央政界が地方政界に学ぶべきこともあるのではないか。


ふるかわ 拝

平成22年7月13日(火)
第367号「さが食育フェスタ2010伝説」

昨日(12日)、「さが食育フェスタ2010 "成功の絆"に感謝する集い」という会合が行われた。
6月12日(土)、13日(日)、佐賀市をメイン会場にして開催された全国食育大会(さが食育フェスタ2010)の大会の準備や運営に関わった団体の人たちが一緒になって、みんなのおかげでこの大会がうまく行きました、ということを喜び合う会だった。

この大会は毎年全国のどこかで開かれている食育の啓発のための大会だ。去年は島根県だった。今年の佐賀大会は、これまでにない盛り上がりと参加を実現しようと、行政だけでなく、地域で活動しているCSO(市民社会組織)をはじめ、88の食育関係団体が動いてくれた。
言われたからやる、からのスタートだったかもしれない。でもそれぞれの団体において、自分たちの活動を充実したものにしたい、という思いや、フェスタ当日はできるだけいいものをみんなに見てほしい、という気持ちが生まれた。行政の側も、正規・非正規に関係なく、そしてそこに在籍する期間の長い短いに関係なく、本当にひとりひとりがこの大会の成功に向けて必死に動いてくれた。臨時に立ち上げたフェスタの宣伝隊の人たちも、どうやったら関心を持ってもらえるのか、来てもらえるのか、真剣に考えてくれた。なんだかワールドカップの日本代表チームみたいなノリだった。ムダな人がいない。みんな自分がやらなければらない仕事をきちんとしている。

たとえば、どうやって県外から人を呼び込むか、広報担当はツイッターを使うことを思いつき、それでフェスタのことを発信し始めた。そしたら、ある日、こんなことが起きた。
大会を盛り上げるためにキャラクター「たべんばくん」を作り、実行委員会では「たべんばくん」の緑茶や紅茶などいくつかの関連グッズも作った。それをツイッターに書いたところ、ある方から「着ぐるみはないですか?」という反応が来た。「着ぐるみは予算もないですから・・・」と返事したが先方は「着ぐるみはやはり必要なのでは」と主張。何回かのやりとりの後、広報担当は、思いあまって「ではあなたが作っていただけませんか?」と書いてみた。まあ、普通ならしないだろう。相手は顔も名前も知らない人なのだ。かりにそう書いたとしても「はい、わかりました」とはならないだろう。


それが、そうなった。


「ではあなたが作っていただけませんか?」と言われたその方は、「わかりました」と返事したのだ。
広報担当は「作っていただいたものは佐賀県に寄贈していただけますね?」と確認。「もちろん」というやりとりがあって、しばらくしてから本当に「たべんばくん」の着ぐるみが県庁あてに送られてきたのだ。
その方は、「兵庫県にお住まいの40代のお方」とだけ書いておこう。
その方は、もともと着ぐるみが好きだというが、どこかの大会のために自分で費用を負担して着ぐるみを作ったのはこれがはじめてだったという。
食育フェスタ当日には、その方が佐賀に来られ着ぐるみに入って大会を盛り上げてくれた。
広報担当が言う。「この方が着ぐるみに入ると着ぐるみがちがうんですよ」。「どうちがうの?」と聞くと「着ぐるみの歩き方がきれいだし、いきいきするんです。それに、こどもたちにやさしい動きをしてくれます。」という。

こういうエピソードがあちこちにあったのがさが食育フェスタ2010だったのだ。

僕は大会の冒頭の挨拶でこう申し上げた。
「大会の所期の目的は、準備活動の中で達せられたと言ってもいい。」


こうした食育フェスタそのものはたいへんな盛り上がりを見せ、2日間で3万人の入場者を目標にしていたが、なんと4万3千人の人たちが来てくれた。もちろん食育フェスタ史上最高だ。(これまでの最高は群馬県で行われた2万8千人だった。)


初日の夜は中心商店街で「ほとめき祭」と題した、佐賀のおいしいものを食べる催しが行われた。これもびっくりするくらいたくさんの人が来て、昭和50年代のアーケード街を思い起こさせるほどだった。イベント会場の回りのお店にもたくさんのお客さんが溢れた。
翌日、この「ほとめき祭」の実行委員会の人に会った。その人はこういった。「昨日は商店街の人から本当に感謝されました。「ありがとう。いいものをやってくれて」って言われましたよ」。そしてこう付け加えた。「この言葉一つで「よおし、またやろう」っていう気になるんですよね」


夕べの「絆に感謝する集い」での挨拶で僕はこう申し上げた。
「さが食育フェスタ2010は今日で終わりです。でも、食育の活動は終わりません。今日からまたスタートです。それぞれのところで、それぞれの一歩を進めていきましょう。
そしていつか新しい話、新しい仲間とともに、また、集まりましょう。」


この食育フェスタ2010はきっと伝説になると思う。


ふるかわ 拝



着ぐるみのたべんばくん↓



大会会場での「たべんばくん」   元気野菜をもった「たべんばくん」
   

平成22年7月6日(火)
第366号「楽天の社員食堂」

楽天の三木谷社長が「これから楽天は社内公用語を英語にする」と宣言して話題を集めている。
ユニクロの柳井社長も社内公用語を英語にしておられると言うし、日産自動車など外国人が経営している会社はすでにそうなっているのだろう。
楽天では社内会議だけじゃなくて社員食堂まで英語表記になったという。「うどん」が「UDON」になったというのだ。見たい!どこまで楽天社内の英語化が進んでいるのか社員食堂だけでも見てみたいなと思う。そんなふうに僕が思うだけでも、三木谷さん、大成功ではないですか。

ユニクロ(というかファストリテイリング)は世界戦略があるから、というのはわかるし、日産自動車はカルロス・ゴーンがトップだからわかる。
でも、楽天が、というのが意外だった。楽天市場のイメージしかなかったものだから。ところが楽天は中国やアメリカ、フランスの企業を買収していて、世界一のインターネット企業になることをめざしているのだという。

もちろん、今回の決断には賛成も反対もある。僕は賛成だ。
お客様や取引先に海外の人が増えるなら、それに対応できる人材を育てていく必要があるのは当然だろう。
佐賀県庁は、県民の圧倒的多くが日本人で日本語を理解するので、外国語が使えることを採用の条件にはしていない。それでも人事委員会が最終合格者を決めるときは、英語、中国語、韓国語・朝鮮語といった外国語がとくにできる人には加点がなされることになっている。
いまや外国とのやりとりが県庁においても「ときどき」出てきているし、流通や観光の関係では「頻繁」と言ってもいい。アジアの成長を日本の、そして佐賀県の発展につなげていくためにはどうしても外国語の運用ができる人材が不可欠になってきている。
ましてや、世界を視野に入れた民間企業の場合はなおさらのことだろうと思う。

反対の人は、「英語だけできたって、仕事ができなければしょうがない」と言う。
それはそのとおりだが僕は本当にそうなるのだろうかと思っている。
英語とコンピュータは21世紀に生きるビジネスパーソンの必修科目だと思うが、たとえば、社内や県庁内で、コンピュータができるから、という理由だけで昇進した、という人間が存在するのだろうか?
コンピュータリテラシーが高くて、そのおかげで情報収集能力が高く、それを仕事に活かすことができていれば、それは仕事ができる、ということなのだろうし、英語が出来ることで海外とのやりとりもスムーズに出来てそれで業績を上げることができればその社員は仕事ができる社員ということになるのではないだろうか?
英語にしてもコンピュータにしても「これさえできれば偉くなれるよ」ということではなく、「これらの力が必要とされるようになるから、ちゃんと使えるようになるように勉強しよう」ということなのではないだろうか。
民間企業しかり、自治体しかり。


ふるかわ拝