2012年8月

平成24年8月28日(火)
第475号「オリンピックのおまけとパラリンピックへのつなぎ」

先週のこのコラムでも「オリンピックが終わって」と題していたが、もう少しだけ関連することについて述べたい。

まずは、オリンピックの体操に関連して。
これはオリンピックの男子体操競技を観に行った人から聞いた話のまた聞き。
今回、成績的には圧勝とまで行かなかった日本の体操。しかし、それを競技場の現場で見ていると、成績以上の日本体操のすばらしさを感じることがあったという話だ。

ほとんどの国の体操選手は、平行棒の演技の前にチョークのようなすべり止めの粉を手につけるとき、粉の入ったボウルの中から粉をわしづかみにしてとり、それを手と平行棒につける。もちろん余るわけで、手や平行棒につけた残りの粉はぱらぱらと選手や平行棒の周りに散らばっている。たとえは良くないかもしれないが、大相撲のときの力士の塩をまく所作に似ている。
ところが競技場で見ていると日本の体操選手たちは違うという。まず床に置いてある容器を手に取り、それを平行棒に近づけて、持ったまま、平行棒に粉をつける。平行棒のすぐ下に容器があるから、粉が落ちても容器で受け止めることができる。こうすることによって、粉が周りに飛び散らない。
日本の伝統である「きれいな体操」というのは、こうしたことを含めての表現なのかもしれない。




また、選手たちが競技前にはいているジャージ。他の国の選手は脱ぎ棄てて競技に入っていたようだが、内村選手はきちんと畳んでいたそうだ。
競技に入る前からすでに「きれいな体操」は始まっている。


その内村選手がマルチサポートハウスに残したメッセージ。このたび、その写真が入手できたのでご紹介する。
「自由にメッセージを書き込んでください」と書いてあるボードのいちばん上の左端に書き込んであったのがこれだ。

「加藤凌平には絶対負けねぇ! 内村航平」
日本体操チームの中心選手から最年少の選手に向けた、スポーツマンらしいメッセージだ。
加藤選手も負けてはいない。そのボードの右端に「内村航平選手をいつか追い越す! 加藤凌平」と書いていたのだ。
日本チームの中で切磋琢磨しているようすが伝わってきて、どちらが先に書かれたのだろうか、と想像するだけでも楽しくなる。

さて、いよいよ明日8月29日からロンドンでパラリンピック大会がスタートする。英国在住の友人から「パラリンピックのチャンネル4(英国)での広報動画。とてもスマート」ということを聞き、探してみたらyoutubeで発見することができた。英国内で放映されているのとは微妙に違うようだが、たしかにパラリンピックの持つ可能性を感じさせてくれる。
パラリンピックは身体障碍のあるアスリートたちの大会だ。しかしながら、この動画を見ると、そういう説明がいらないのではないか、と思うくらいの鍛え抜かれたたくましさや美しさが表現されている。
ということで、よろしければごらんあれ。

Channel 4 Paralympics - Meet the Superhumans (Annotated Version)

残念なことに今回のパラリンピックには佐賀県出身の選手はいない。いつかそういう人が出るためにはどうしたらいいのか、もこの大会期間中に考えてみたいと思う。


ふるかわ 拝

平成24年8月21日(火)
第474号「オリンピックが終わって」

ロンドンオリンピックが始まる直前のNHKのスポーツ番組の中で、「大会直前において勝つために最も必要なものは次のうちどれでしょう?」という問題が出されたことがあった。はっきり覚えてないが、選択肢は 1 情報 2 食事 3 リラックス(休養) だったと思う。
僕はうーんと悩んだ。確かにどれも必要だがあえていえば「3 リラックス(休養)」かなと思った。
その番組にゲスト出演しておられたのが落合前中日ドラゴンズ監督だったが氏は違う答えを出された。
「それは全部ですね。ひとつでも欠けたらだめ」と明言されたのだ。
それが正解だった。落合氏の答えを聞いて、NHKのアナウンサーが一瞬びっくりしたように緊張感のある表情をされたのが印象的だった。

全部必要とされた三つ、その全部を1か所でまかなうことができる施設が、オリンピックでは今回初めて設けられた。
それがマルチサポートハウスだ。解説によれば「競技に向けた最終準備に必要な機能・資源を集中した選手村外の拠点。ワン・ストップ・ショップというコンセプトで利用者が競技や試合に向けて必要な環境を選択することができる環境を整えるもの」とある。独立行政法人日本スポーツ振興センターが管理・運営している。選手村の近くにある劇場を1棟借りて、そこを日本選手団用の支援拠点にしたのだ。
僕は夏休みを使ってロンドンオリンピックの応援に行ってきたが、そのときテコンドーの濱田真由選手に佐賀県民の方々からの激励メッセージ入りの日の丸を届けてきた。その場所として指定されたのがこのハウスだったのだ。
(写真はクリックで大きくなります)

今回のオリンピックにかける日本政府の意気込みを感じさせる設備とスタッフを備えた良い施設だった。

1 情報については、分析を行うための映像や解析装置などが設けられている。もちろんミーティングルームもあるし、そこではあらゆる会場の様子をライブで見ることもできる。「明日の対戦相手はこう来るからこう攻めよう」という戦略を立てることができる。
2 食事については、東京・北区のナショナルトレーニングセンターのスタッフが英国まで来て日本と同じものを作ってくれている。選手村にも世界各地の料理はあるが、やはり口に合わないという選手も多く、ほんとにおいしいと評判。
3 リラックス(休養)については、高気圧カプセルや畳のスペース、個室空間などが準備されている。
選手村はもともと大会終了後は一般住宅になる予定のため、ホテルのようにシングルルームというのはなく、最低でも2人。3人以上が同室というのもめずらしくない。
このため、1人になる空間がほしいという選手が多く、そのために個室空間も確保されている。畳でリラックスできるスペースもあって、そこにはメッセージボードも。そこで体操の内村選手のメッセージを発見した。同じ体操チームの最年少・加藤選手に向けてのものでほほえましくユーモアあるものだった。

ハウス内では「リカバリー」という言葉が多用されていた。食事にせよ栄養補給にせよ、試合や練習で失われた栄養分をどうやって短い時間でリカバリー(回復)させるのか、ということのようだった。

たいへん良い施設なのだが課題もあった。文部科学省が取ってきた予算で開設された施設なので、オリンピックの後に開かれるパラリンピックの選手たちは使えないのだという(パラリンピックは厚生労働省所管)。
佐賀県は今年の4月から、障碍者スポーツも含めて学校スポーツ以外のスポーツ全体を「文化・スポーツ部」に移管している。だから、障碍のある人とない人でスポーツの所管が違うということはない。国でもやがてスポーツ庁が設置されることと思うが、その時にはぜひとも所管を一つにしていただきたいなと思う。
これからオリンピックとパラリンピックは大きく一つの大会になっていくのではないか、と僕は思う。
「東京でオリンピックを」というためにも、世界に向けてそういう哲学を発信していくことが求められているのではないだろうか。


ふるかわ 拝

平成24年8月14日(火)
第473号「全国知事会議イン香川 意見交換会のテーブルトーク」

全国知事会議は3日間にわたって会議が行われるが、意見交換会も参加した者にとって有益な場の一つだ。食事をとりながら話をするのだが、お互い同じ立場にある者として、共通の悩みも課題も多い。また、ほかの知事さんの話を聞いて参考になることもいろいろある。昼食と夕食、それぞれ自由席でいろんな知事さんたちと会話をするのだが、今回も勉強になることが多かった。

たとえば、ある日のテーブルでは果物のことが話題になった。
山形の知事さんに「最近さくらんぼ、いかがですか」と尋ねてみたら、こういう答えが返ってきた。
「これから大変になります。これまでもアメリカからの輸入のさくらんぼがありましたが、果皮の色がダークだし、果肉も濃い色ということで日本産とは違っていて、日本産が優位に立っていたんです。ところが、最近、アメリカ産の『レーニア』という品種のものができていて、これは日本産のさくらんぼと同じような赤い色の果皮と白い果肉で、しかも安いんです。南半球産のものと違って、時期もぶつかりますしね。こういうものが本格的に輸入されたら大変なことになる、と思います。だから私はTPPなんかとんでもないと思ってるんです。」
栃木の知事さんは別の角度から話をされた。「いちごは国際競争というよりは国内産地間競争ですね。いま、栃木県が長年の研究成果をかけて『あまおう』を超えるものを作っています。もう少しで本格的に市場に出回るようになります。」
「もう名前は付けられたのですか」。僕が尋ねた。
「まだですがね。『あまおう』よりも大きくて甘くて色がいいものになってますから」と、あくまで『あまおう』に対する対抗意識に満ち満ちている。
佐賀県は『あまおう』は栽培していないので、本当は栽培面積全国第2位である『さがほのか』の後継品種の開発の話をしてもいいかなとも思ったが、ここは黙ってお話しをうかがうことにした。
栃木の知事さんは続けられた。「でもですね、いろんな品種を掛け合わせて毎年1万株の交配苗を作って新品種の開発をやってきているのですが、こういうことを一つの県でやっていくのが本当にいいのか、ということは疑問に思う面もあります。たいへんな労力ですから。」
たしかに、それぞれの県で開発するのはある意味での無駄があるのは事実だ。その意味では、国が開発して、全国のいちご農家が同じ品種のものを使う、というほうが効率はいい部分もある。
ただ、一方で同一品種を全国で栽培すると、どうしても大消費地に近いところが運搬コストが安い分、有利になるという要素もある。佐賀県など九州の産地としては、それだけでいい、ということにはなかなかならない。
そうか、栃木県は毎年1万苗やっているのか。佐賀県は5千苗だ。しかも来年あたりから栃木の新品種が本格的に市場に入ってくる、となると開発のスピードも上げなければ・・・。
いろいろ考えながらお話しをうかがった。

一方、こんな会話をしたテーブルもあった。
どこかの知事さんが「ドラマ『水戸黄門』が終わったねえ。これでレギュラー番組から時代劇がなくなってしまって残念」と言われた。それを聞いていたどこかの知事さんが京都府の知事さんに「太秦、大変でしょう」。
たしかに京都の太秦には、主に時代劇を撮影している東映京都撮影所がある。
京都府の知事さんがこう応じられた。「そうなんです。だから、あちこちに『時代劇を』とお願いしてまわっているんですよ。」
どなたかが反応された。「太秦、遠くて高いからですよ。」
それを聞いていた新潟県の知事さんがこうおっしゃった。「だから、わが県でロケどうですか、と言ってるんです。水戸黄門関係のおみやげとかも、うちの県にはありますし。」
僕が思わず尋ねた。「なぜ、新潟県に?」
新潟県の知事さんは笑って答えられた。「だって『越後のちりめん問屋』って出てくるじゃないですか。」

オスプレイの配備についてどう思うか、という議論も出たりした。その話を受けて、翌日の知事会議の場で僕がオスプレイの配備についてみなさんに議論を投げかける口火を切る、ということになり、それが全国知事会としてのオスプレイの配備に対する決議につながったのだった。

1年に1度だけの泊りがけの全国知事会議。会議場の外でもいろんなことが起きている。


ふるかわ 拝

平成24年8月7日(火)
第472号「発見 ロンドンオリンピック」

ロンドンオリンピックがスタートした。体操の内村選手は別格として、なかなか思ったようには金メダルは取れていないが、それでも日頃あまり興味のない種目を含めてついつい観てしまう。
今回は、テレビ放送以外にもライブストリーミングが広く実施されている。インターネット経由で試合を見ることができる、という仕組みだ。
NHKのロンドンオリンピックのサイトから入るとすぐのところにネット生中継(ライブストリーミング)というボタンがある。(URLは下に書いてあります。)
これを使うとテレビで生放送されていない競技を見ることができるため、かなりの試合を見ることができるのではないかと思う。

これで思い出すのは、平成19年の全国高校総体「2007青春・佐賀総体」のときのことだ。このとき、佐賀県は全国高校総体ではじめて全種目のインターネットライブ中継を行った。「見るより参加、参加するなら主役」の活動スピリッツで高校生を育成して、大会の主役として現場で活躍してもらったのだった。当時は、ユーストリームというライブ配信サービスもまだなく、かなり苦労をしてこの中継を実施したことを覚えている。それからわずか5年で、オリンピックでライブストリーミングが実施されるようになった。変化が速いなと思う。

変化という意味では、今回のロンドンオリンピック、NHKでは生も収録も含め、総合放送で合計約150時間の字幕放送が行われている。これは北京オリンピックのときの約2.5倍の時間だ。朝7時から深夜24時までのオリンピック中継とニュースはほぼすべて字幕付き、となった。我が国では2017年度までには、字幕付与が可能な放送番組のすべてに字幕を付けることを目標とされているが、オリンピック期間中においては数年後を先取りしている感じになっている。佐賀県はこれまでもテレビだけでなく映画にも字幕と副音声をつけてほしいということを国や関係機関に提案してきているが、こういうことを通じて映像のUD化についても理解が広まればと思う。

また、開会式でも新鮮な発見があった。それは聴覚障碍のある子たちのコーラスグループが英国国歌を歌っていたことだ。しかも手話つきだった。パラリンピックではなく、オリンピックの開会式というところに感激した。佐賀県は今年の4月から障碍のある方のスポーツについても文化・スポーツ部で一元的に担当するようにしているが、こうした障碍のあるなしにかかわらない、ものの見方が広がってきていること、僕たちの進んでいっている方向がまちがっていないことを実感した。

開会式といえば、入場行進の後、誘導の不手際から日本選手団がスタジアムの選手エリアに入れず、場外に出されてしまった、という記事をネットで目にした。本当だとすればとんでもないことだが、ほとんど報道されていないのはなぜなのかよくわからない。少なくとも日本にとっては、謎のインド人紛れ込み事件や無気力なバドミントンの試合より大問題のように思うが。今回のオリンピック、運営自体は不思議なことが目立つ。

佐賀県出身あるいはゆかりのある選手たちも活躍してくれている。活躍を楽しむためにも、さきほど紹介したライブストリーミングが役に立っている。ボートの軽量級ダブルスカルなどはテレビでやっていないけれど、ライブストリーミングのおかげで福本温子選手の活躍を見ることができた。セーリングやテコンドーもぜひこうしてお楽しみあれ。画面はきれいだし、ストレスなく楽しむことができる。
また、このNHKのオリンピックサイトでは日本代表選手に対する激励メッセージを受け付けている。すでにたくさんのメッセージが佐賀県民から寄せられている。ぜひ見てみてください。まだまだメッセージは受け付け中だ。

NHKのオリンピックサイトはこちら。
http://www1.nhk.or.jp/olympic/ 


ふるかわ拝