2014年11月
 
  平成26年11月25日(火)
第591号「上海在住外国人対象の観光プロモーション 」

先週の火曜日、僕は上海にいた。メインの仕事は春秋航空の王正華会長との面談だったが、これと併せてちょっと変わったイベントを実施したのだ。
上海在住の外交官夫人を対象とした佐賀県観光プロモーションだった。

普通、上海で観光プロモーションをするときは中国人を対象とするのが一般的。佐賀県では、それに加えて上海在住日本人に対しても「仕事や休暇で日本に帰るとき安くて便利な春秋航空の佐賀便を使いませんか」というアプローチをしているが、これは珍しい方だ。
今回はさらに一歩進んで、上海に住んでいる、中国人でも日本人でもない外国人に対してアプローチをしようということでやってみた。駐上海日本国総領事館の石川領事が中心になって奔走していただき、上海在住の外国人の代表である各国総領事・領事夫人の方たちのグループ(駐上海総領事夫人団)の方たちに来ていただくことができるようになったのだ。

上海が繁栄していた第二次世界大戦前、上海にはたくさんの西洋からの外国人が暮らしていて、その人たちは夏になるとよく唐津のホテルに訪れていたという話を聞いていた。
そのうちの1人がジャック•マイヨール。フランス国籍で、フリーダイバーとして初めて水深100メートル以上に潜ったという人物。幼い頃、夏になるたびに来ていた唐津の海で初めてイルカに会ったことが、彼がフリーダイビングの世界に入りこむきっかけだった。

当時は外国人専用の宿が唐津にもあり、お客さんを集めていたようだ。飛行機のない時代だから上海から唐津までは船と鉄道との乗り継ぎになるが、それでも上海在住の外国人にとって唐津は一番近い外国だった。
今回は上海在住の外交官夫人に、「一番近い外国としての佐賀県」、「春秋航空を使えば諸経費込みおよそ100 USドルくらいで佐賀に着く」という、いわば気軽なお隣さん的な存在としての佐賀県をアピールしたかったのだ。

結果的に、この目論見は成功したように思う。

ランチをとりながらのイベントとなったが、会場の日本料理店には定員を超える申し込みがあり、僕の20分間のプレゼンテーションの後に、たくさんの興味深い質問が寄せられた。
「海で泳げる時期は、いつからいつまで」「訪れるベストシーズンはいつか」「気候は上海と比べてどうか」「ビーチの近くにホテルはあるか」などなど。
中でも一番多くの方々から聞かれたのが「空気はきれいなのか」ということだった。
せめて休暇の時くらいは大都会の喧噪から離れ、空気の良い所に行ってのんびりしたい。
様々な意味で安心できて、それほど遠くなく、そしてできれば安く行けるところがいい。
上海に住んでおられる方々の、そういう気持ちが垣間見えた。

上海から1時間半で到着する別天地。忙しい日程ではなくゆっくりのんびり美しい海と広い空を楽しむ。
およそ100年前の上海在住の外国人たちが楽しんでいた、その旅をもう一度今の人たちに味わっていただきたい、という思いはどうやら伝わったようだった。

たくさんの質問の中、「春秋航空は週何便飛んでいるのか」というのもあった。
「週3便だ。それほど頻度が高くなくて申し訳ない」と申し上げたところ、「そっちのほうが良かったわ。毎日飛んでれば1日で帰らなければならないかもしれないから(笑)」という答えが返ってきた。

さすが外交官夫人なのだった。


ふるかわ 拝

平成26年11月18日(火)
第590号「解散・総選挙をめぐって 」

どうやら解散・総選挙は本当らしい。

まさかと思っていた解散・総選挙がにわかに現実のものと感じられたのは11月11日、先週の火曜日だった。

その日は、九州知事会メンバーと九州の経済界の人たちで構成する九州地域戦略会議が長崎で行われていた。
前日(月曜日)のお昼から長崎入りしていろんな会議をしていたのだが、その月曜日のお昼の段階では、僕の理解では「解散なんて声もあるらしいですね、ははは」程度の感じだった。
それが、翌火曜日の午前中から何だか雲行きが変わってきた。九州地域戦略会議のメンバーのところに会議中なのに電話がかかりはじめ、(もちろん会議中だから取られないが、)休憩になるとあわてて電話をする人の数が増えた。僕のところにもある人から電話がかかってきて、「どうやら解散らしいよ」と伝えてくれた。この日のお昼を食べるころには、すっかり解散が既定路線のような雰囲気にすらなっていた。この間、24時間。
解散風という風は、突風みたいにいきなり吹くのだった。

この時期、というのは僕にとって、もともと大きな意味を持つタイミングだった。僕は統一地方選挙で知事に当選した。つまり4月に行われた選挙だったということだ。今年で3期12年目。3期目の最終年となる。来年の春が改選期なのだ。果たして、来春の知事選に僕が4選をめざすのかどうか、その点について、「11月にも明らかにしたい」と会見などで語ってきた。
そこに降ってきた、この解散の動き。総選挙に出馬してほしいという声があるのは事実で、それを含めて最終的な判断をしなければならなくなっている、ということだ。
いろいろ考えていることもあり、まだ最終的な判断はしていないので、ここ数日、たくさんの記者の人たちが朝から公舎の前に待っておられ、「ご決断されましたか?」というようなことを尋ねられている。現時点では決めていないので「決めておりません」としか答えようがなく、待っていただいている方々には朝早くから申し訳ないと思うが、決めたときには申し上げたいと思う。

新聞やテレビなどではいろいろ報じられているが、僕自身が決めたものはまだない。もうしばらく待っていただきたい。


ふるかわ 拝

平成26年11月11日(火)
第589号「自治体の海外視察 ~その意味と価値 」

先週、秘書課の担当者あてに東大の学生から1通のメールが来た。

それは卒業論文のためのアンケートだった。
論文は、縮小傾向にある「海外視察」の有効性をあらためて明らかにし、より良い海外視察のあり方を探ることがテーマで、全都道府県・市町村の議員・首長を対象に調査していた。

その学生は、ヘルシンキ大学に留学中にフィンランドやオランダの様々な学校や教育機関を訪問して、現地の人の思いや政策実行者側(この場合、校長や教員)の意見を聞くことは非常に重要であると感じたのだが、その際「日本の人はよく視察に来るけど、『私たちには難しい』と言って何も変えようとしていないのではないか」との指摘をされて、「では、何のために視察にいくのか」という疑問を持ち始めたのが、テーマ設定の動機だったという。

質問は8問で、こんな感じだった。
【質問】
平成17年度~26年度において、知事による公費での海外行政視察についてお伺いしたいです。ただし、今回の調査では、姉妹都市交流目的の視察や招待による訪問などは視察に含めないとします。
問1. 平成17~26年度において、上記条件の海外行政視察は実施されているでしょうか。
問2. 現在の海外行政視察(実施の有無、予算など)について定められている法律及び条例を教えていただけますでしょうか。
(以下、1.の回答が「はい」の場合は、3.~8.をお答え下さい。1.が「いいえ」の場合は、7.8.のみお答え下さい。)
問3.~6. 略
問7. 海外・国内行政視察以外の勉強方法を実施している場合は、その方法の種類も教えて頂きたいです。
問8. 通常の海外及び国内行政視察の計画立案のプロセスについて、教えていただけませんでしょうか。


これに対する事務方の答えは、
答1.実施していません。
答2.海外行政視察についての定めはありません。
答7.インターネット・書籍での情報収集等
答8.知事については、海外・国内ともに視察を主たる用務とした出張はありません。

まことに簡潔で素気ない感じがするが、この質問に対する事務方の回答としては正しい。
でも、この回答では「海外視察」の有効性が分からない。学生の疑問にもっと応えたてやりたいではないか。僕は、執務の合間を縫って、以下の文章をしたため、回答の頭に付け加えることにした。

佐賀県知事の古川康です。興味深いテーマを選んでいただきありがとうございます。
アンケートに対する回答は以下のとおりで、佐賀県知事としては視察を目的とする出張はしていませんが、それはそれを必要と考えていないから、ではありません。
私は海外における県産品や観光PR、会議への参加など年間に何度も海外出張します。そして、その際には、その国にある日本大使館・総領事館をはじめとするさまざまな方面に行き、現場を観、お話しを伺い、今後の県政展開に反映させています。
これは「視察目的の出張」には当たらないので今回はなし、と答えているものです。
このように、首長はこうした形の出張がありますが、議員の方の場合は首長に比べてそういう機会が少ないと思います。
しかしながら、首長がこうした海外における見聞を背景にした政策を実行しようとしても、議会の理解がなければこれを進めることはできません。
議員の方たちが海外で見聞を広げられることはこれからの自治体経営にとって必要なことだと考えています。
たとえばの例を挙げましょう。
佐賀県は全国でいちばん教育の現場でICT活用が進んでいる地域ですが、これが実現できているのも、海外の学校の様子をみてきた私がこれはこれから日本においても必要になるから、と担当職員に視察に行かせました。
そしてその職員とともに議員の方々にも行っていただきました。(政務調査費だったと思います。)その結果、韓国やシンガポールにおけるICTを活用した教育の状況を目の当たりにされ、佐賀県でもぜひということで、議会での質問や応援をされ、それが現在の状況につながっています。
視察に来るがこれは無理と言って帰られるというフィンランドの例を挙げられました。確かにそうかもしれません。でもたとえばフィンランドのメソッドによる少人数学級の実現を望ましい、という印象を持って帰られれば、我が国における少人数教育の必要性というのものについては、理解を深めていただけた、ということもあるのではないでしょうか?新聞報道によれば財政当局は35人学級をやめて40人にせよ、と主張しているようです。そういう動きに対して地方議会として声を挙げる際の参考になっている、というようなこともあるように思います。
私たちの地域は、世界の中で必要とされる存在にならないと発展はないと思っています。なので、議員の方にも海外の状況を理解していただけないと困ります。その際、ネットや文書を読んで理解できるためにはそれを裏付けるような生身の経験がないと理解できないと私は思っています。
ということで以下の回答は何かしら冷たい内容のように見えるかもしれませんが、この際、私の意見を述べました。
もっと聞きたいというのであれば歓迎します。ぜひ佐賀便でお越しください。高い、というのであればLCCも就航していますし。


学生への回答を送った翌日、秘書課の担当者から僕に来たメールのタイトルは、
「東京大学の学生さんが本当に来佐されます」。

いいね!きっと来るだろうと思っていた。


ふるかわ拝

平成26年11月4日(火)
第588号「タイでのプロモーション 成功の予感 」

先週はタイ・バンコクに佐賀県の観光と佐賀牛のプロモーションのために出張した。月曜日の夕方に着いて火曜日の夜にはまた日本へ。忙しい日程ではあったけども、とにかく手ごたえがあった。
タイで佐賀がブレイクするのは間違いなんじゃないか、というくらいのものだった。

最近、佐賀県とタイの関係がとても深くなってきている。
まずは、映画。今年の2月に公開されたタイ映画「タイムライン」は、佐賀県が舞台だった。祐徳稲荷神社から唐津くんち、伊万里の大川内山に至るまで県内の主な観光地が入れ込まれた甘酸っぱいムービーで、観客動員もタイ国内では初登場で2位にランキングされるなどかなりヒットした。このため、その舞台になったところを見たいというファンの撮影地詣でが、すでに始まっている。祐徳稲荷などは、毎日のようにタイの方たちが訪れておられるほどだ。
これに加えて、来年の前半には、タイのチャンネル3という、日本でいえばNHKのようなビッグな局のゴールデンタイムに、佐賀県を舞台にした連続ドラマがスタートする。題して「きもの秘伝」。
この主演俳優は通称バードさん。国民的な大物俳優なのだ。(とは伺っていたのだが、今回行ってみて改めてその人気を実感した。「バードさんって知ってますか?」とタイの人に聞くと、「知らない人なんていないよ」という答えが返ってくるほどの人。僕は佐賀県内の撮影のときにお目にかかったのだが、とても穏やかな優しい方でそんな「大物!」という偉ぶった感じではなかった。)
いわば、高倉健主演のNHK大河ドラマの舞台に佐賀県がなった、というくらいのことなのだ。

こうしたことがあるために、旅行業者の方を対象に開いた商談会でも引きが強かった。昨年同じような商談会をやった台湾でもそこそこの引きはあったが、その比ではない。面談の時間は3時間くらい準備したが、お目当ての旅館やホテル、お店との商談の順番が来るまでは帰らない、と待っておられる旅行業者が多いのだ。

タイでの商談会は今回が2回目というあるホテルに尋ねてみても「全然違いますよ」とのこと。ただ、こうも付け加えておられた。「前回はこちらも初めてということもあって準備不足だったのです。今回は改善してきましたが。」
僕は尋ねた。「どんなところを改善したのですか?」
答えはこうだった。「たとえば前回の場合だと、団体で来ていただいたとき夕食はこういう内容で単価はいくら、というような提示をするわけですね。メインはお肉で、みたいに。そのとき、先方から『お肉を食べられない人にはどんなものを出してくれるのか?』と聞かれたのですが、まさかそういう質問があると思ってなくて、厨房と相談できていなかったもので、答えられなかったんですよ。今回は、そういうところも、ばっちり準備してきてます。だいたい何を聞かれるのか、ということが分かってきましたから。」

成約率は前回よりはるかに高くなりそうだ。

それと、旅行代理店をはじめタイの方々にお話していていちばん反応がある佐賀県の取り組みは「タイ語対応の24時間オープンの無料コールセンターをすでに開設している」ということ。
タイ語だけでなく、英語、中国語、韓国語と4か国語に対応しているのだが、こういうことができているのは佐賀県しかない。レセプションのスピーチで「タイのお客様に来ていただきたい、という気持ちをこんな形(タイ語対応のコールセンターの設置)で表してみました」と述べると、おお、というどよめきが沸き起こっていた。

タイ訪問の最後がバンコクでの日本大使公邸における佐賀県主催のレセプションだった。18時に始まり、20時に終わる予定だったこのレセプション。タイと佐賀県との関係や魅力をアピールする気持ちが届いたのか、それとも用意した佐賀牛のおいしさが相当だったのか、20時になってもたくさんの人が会場に残っていて、大使館側が退場を促すためにわざと明かりを消すほどだった。
この種のレセプションに何度も来ておられる方が、こういわれた。「自分が出た中で今日のがいちばん良かった。佐賀すごい」。

準備は大変で職員は相当苦労したが、こうしたお褒めの言葉をいただいたことで、疲れも少し取れたのではないかと思う。

僕は1泊で帰国したが、残ったスタッフたちは翌日もあちこち関係先を訪問してお礼を述べたり、さらなる商談につながるように汗を流した。

来年の2月、3月といろいろさらなる仕込みをして、タイの正月である4月には是非たくさんのタイの人たちで佐賀がにぎわうようになればと願う。きっとうまくいく。なんかそんな予感がする。


ふるかわ拝