2014年2月
平成26年2月25日(火)
第552「『d design travel 佐賀』発刊!」

去年の4月、オープンしたばかりの渋谷ヒカリエという大型商業施設に行った佐賀県首都圏営業本部の職員が「おもしろいスペースがありますよ」と教えてくれた。
新しいもの好きの僕としては行かない訳にはいかない。すぐに行ってみた。そこは、渋谷ヒカリエ8階にある「d47 MUSEUM」。47都道府県の名物を紹介しているスペースだった。確かにセンスがいい。
気になったので、スタッフの方にご挨拶をして、お話を伺った。
「全国各地にある『その土地らしさ』をきちんと顕彰していきたい。そのために『d design travel』という名のガイドブックを47都道府県分すべて自分たちの視点から作る。その試みを通じて、次の時代に伝えていかなければならないものをちゃんと評価することを目指す」ということだった。
我々がやらなければならない仕事、とも言えることにこの「D & DEPARTMENT」という会社が乗り出しておられたのだ。

もう一度d47 MUSEUMを見渡して、改めてそこに置いてあるもののセンスに感心した。
僕は社会人になってから首都圏以外では沖縄県、長野県、岡山県、長崎県そして佐賀県の5県に住んだことがある。
だから今でもこの5県については、観光客ではなく生活者の目線で美味しいお店や素敵な場所を見ることができる。
その目線で見たとき、この『d design travel』の目線の置き方やお店の紹介の仕方はまことに正しいと思った。

かくしてヒカリエで一目惚れ、そこで伺ったお話に感激をした僕は「47都道府県ということであればいつかは佐賀県バージョンを作ることになるだろうが、ぜひとも早くお願いしたい」と申し上げた。編集サイドからは「この本の雰囲気にあう良質の広告主を佐賀県内で探すことができるだろうか」というお返事だったが、そのときは一緒に探しましょうということで別れ、その後佐賀県首都圏営業本部を窓口にして活動が続けられた。それがようやく本になったのだ。
『d design travel 佐賀』は47都道府県の中で12番目の発刊。まあまあ、ではないだろうか。

この本について僕が気に入っている点はいくつもあるが、特に冒頭に明記してある編集の考え方を挙げたい。

編集の考え方。
・必ず自費でまず利用すること。実際に泊まり、食事し、買って、確かめること。
・感動しないものは取り上げないこと。本音で、自分の言葉で書くこと。
・問題があっても、素晴らしければ、問題を指摘しながら薦めること。
・取材相手の原稿チェックは、事実確認だけにとどめること。
・ロングライフデザインの視点で、長く続くものだけを取り上げること。
・写真撮影は特殊レンズを使って誇張しない。ありのままを撮ること。
・取り上げた場所や人とは、発刊後も継続的に交流を持つこと。
取材対象選定の考え方。
・その土地らしいこと。
・その土地の大切なメッセージを伝えていること。
・その土地の人がやっていること。
・価格が手頃であること。
・デザインの工夫があること。

いいでしょう?こういう考え方が全体を貫いているのだ。

実際に編集部の方は2か月間佐賀県内に住んで材料を探し、確認されている。そのおかげで僕の知らない場所やお店もいろいろ載っている。

また、「佐賀の一二か月」と題した歳時記があり、県内各地域の様々なお祭りが載っている。「鹿島のふな市」「綾部神社の旗あげ神事」くらいでは驚かないのだが「国際渓流滝登りin七山」「取り追う祭り」(伊万里市)なども取り上げられていて新旧さまざま。このあたりを見ただけでもセンスがあると感心してしまう。
僕が行ったことのないものもいくつもあって、ぜひ今年は行ってみたいと思わせる。
その土地ならではというものを大事にするだけに、有田焼や唐津焼などが繰り返し出てきているのも嬉しいが、伝統的な窯元だけでなく、新しいことに挑戦している若い人たちやこれまでなかなか佐賀県内でしっかりとした評価をする人が少なかった森正洋先生の作品など、デザイン面からのアプローチには力が入っている。

佐賀をちゃんぽん文化圏として捉えているのもまことに正しいと思う。佐賀ちゃんぽんをこれから売り出していこうと考えていた僕としてはまったく嬉しい。

佐賀市内のシアター・シエマが紹介されていたり、伝酒庵という渋い酒場が載っていたり、編集者が「佐賀の実家」と評するあ・うんという店があったりと、この本の編集を通じてそれに参加した人たちの気持ちが伝わるような本になっている。

手にして2時間ぐらいで読み終えたが、どのページにも伝えたいメッセージがあり、それが読む側に伝わってくるのだ。
ぜひとも多くの人にこの本を手に取ってほしいと思うし、まずは佐賀県内の人たちにぜひ読んでほしいなとも思う。

全国の書店約300店で販売中で、県内では積文館佐賀デイトス店、紀伊國屋書店佐賀店、明林堂書店南佐賀店・武雄店・嘉瀬町店、ツタヤ武雄店で買える。ネット上ではd design travel ネットショップ

せっかく作ってもらったこの本、みんなで大いに盛り上げていこうではないか。

さらにこの本の発刊を記念して、d47 MUSEUMでは3月23日まで佐賀県フェア「d design travel SAGA EXHIBITION」を開催している。この間、同じフロアにあるd47食堂では佐賀定食を出していると言う。
ここに行くと佐賀をいっぺんに感じることができ、おまけに佐賀の味も堪能できる。
僕も先日行ってきたが、十分に楽しむことができた。

そして2月21日にはここで発刊記念の「d47落語会」が開催され、佐賀県に新作落語が奉納された。
そのときの様子はここに。
http://www.saga-chiji.jp/ugoki/

「d47落語会」についてはここで。
http://vimeo.com/86808804

柳家花緑師匠は、佐賀県をテーマにしたこの落語をひっさげて3月27日木曜日に佐賀市内のあけぼの旅館で落語会を開催される。
ぜひともおろしたての落語を聴きに来てほしいな。
こんなこと、二度とないのだから。


ふるかわ 拝

平成26年2月18日(火)
第551「ハラールもEUも 動物に関するグローバル対応はむずかしい」

佐賀県中央部にある畜産公社の建物が古くなったので、いま建替えを検討している。そのこと自体はびっくりすることではない。

ただ、新しく作ろうとしているものの目指す姿はなかなかチャレンジングでほかの県にはないものだ。
「グローバル対応可能な畜産公社」なのだから。
グローバル対応と言うとまずイメージするのがハラール。我が国への観光客もイスラム圏からいらっしゃる方が増えてきている。とくにマレーシアから来られる観光客は、昨年7月からビザが不要になったので、7月〜12月の来日者数が前年同期に比べて1.5倍に増えている。やがてはアジア最大のイスラム教信者を抱えるインドネシアからの観光客のノービザ化も時間の問題だ、とすれば必要になってくるのがハラール対応の食品だ。

現在でもごくごく一部の食品工場などでムスリムの方にも召し上がっていただけるハラールフードを作っているが、牛肉できちんとしたハラール認証を取っている施設は国内にはまだ3か所しかない。しかも、それら全部を合わせても認証が取れている国はアラブ首長国連邦とインドネシア、トルコだけで、マレーシアなどほかのイスラム圏の国の認証は取れていない。ハラール認証はこのように各国ごとに行われていて、共通な認証になっていないのだ。

今回、佐賀県が佐賀県畜産公社と一緒になって作ろうとしているのは本格的なハラール対応施設。本格的な、という意味はたとえば「敷地内で豚の処理が行われていない」とかいうことだけでなく、「半径5キロメートル以内に豚がいないこと」や「当該施設の上流に豚を飼養しているところがないこと」などをクリアする、ということだ。

今回、新しく施設を作るに当たって、こうしたハラール対応の牛肉を提供することについての必要性をいろんなところに聞いてみた。首都圏のホテル、旅館などムスリムの方もある程度お客様になっておられるところだ。
「実は困ってるんです」「ぜひお願いします」「できるようになればご連絡をぜひお願いします」など反応は極めて良い。みんな実は困っている、ということが見て取れた。

グローバル対応と言うからには、もっと別のことも考えておかなければならない。
それがEUへの輸出基準のクリアだ。このことについては以前このコラムで書いたことがあるが、EUは動物愛護の精神にあふれているところなので要すれば「生前この動物が幸せな暮らし送っていたか」みたいなことが試される、ということだ。

その動物愛護の精神あふれる国の一つデンマークでキリンが処分されるという事件が起きた。しかも、動物愛護の発露として、だ。(以下CNN.co.jpの2月10日付の配信記事による。)

先日コペンハーゲンの動物園で同系交配を防ぐためにキリン1頭を殺処分した、というニュースはそれだけでもびっくりだったがさらにそれを解体する様子を一般公開したうえで、死骸はライオンの餌にした、というからもっと驚いた。
殺処分の方法は安楽死だった。動物園の関係者は「安定した健全な群れの維持のために必要な措置。このキリンを生かしつづけると遺伝子的にもっと価値の高いキリンのスペースが取られてしまう」と言っているとのこと。

動物を大切にする、というのはよくわかる。佐賀県の地域防災計画にも避難所の設置のところには「避難所におけるペットのためのスペースの確保にも配慮する」とあって飼っておられる動物を連れてきても大丈夫な対応にする、というのが基本になっているくらいだ。

しかし、デンマークのこの例を見ると、いかに「動物を大切に」が難しいことなのか、というのも実感する。


ふるかわ 拝

平成26年2月11日(火)
第550「永遠の0」

「いいよ」と言う人もいれば「そうでもなかった」と言う人もいて、どちらであってもそれに関する情報が身の回りで増えてくると自分でも体験したくなることってあるじゃないですか。

先日僕が映画『永遠の0(ゼロ)』を見に行ったのは、そういう状況からだった。
公開初日が12月21日。それからするともう7週間経っているので客足が落ちてもよさそうだが、僕が見に行った2月上旬の日曜日は一日4回、しかもその映画館の中で1番大きなシアターで上映していた。
三百数十人入るそのシアターの7割位が観客で埋まっていて、しかも若い人も年配の人もそれぞれいらっしゃるという不思議な空間。
映画館の人に聞いても、「公開直後から爆発的に多いということではないのだが、客足が落ちない」ということと「さまざまな年代の人がご覧になっている」ということを言っておられた。

本編だけで144分という長い映画だったが、その長さを感じさせない作品だった。
あの映画をいわば特攻の賛美と捉える人もいるかもしれないが、二度とこのようなことを起こしてはいけないという戒めとして捉えることもできる。議論は分かれるところだろうが、映画そのものの出来としては大変良かったと思う。
特にVFXの仕上がりは、僕がこれまでに見た日本映画の中で最も精巧にできていたのではないか。
戦闘シーンとして感じられるリアリティはこれまでにないものがあった。
1月末までの観客動員数が全国で約500万人で、まだまだ伸びている。去年の日本映画の最高が『風立ちぬ』で約1000万人だった。『風立ちぬ』の制作委員会にはテレビ局が入っていたが『永遠の0』の方には入っていないことを考えたら驚異的な数字。この作品の動員力はたいしたものだと思う。

原作はあの百田尚樹。本と映画ではいろんな意味で違いがある。たとえば、特攻に批判的な発言をしていた新聞記者の存在が原作にはあるのに映画ではなくなっていて、別の人の言葉になっている。これは映画の製作委員会に朝日新聞社、日本経済新聞社などいくつか新聞社が入っている影響なのかもしれない。また、映画として観たときには岡田准一のほかでは渡世人の役で出てくる田中泯の演技が光ると思った。

実はこの映画の撮影に使われた零戦が佐賀県にあって、映画の公開に合わせて県内の映画館で展示されていた。
それは神埼市の馬場ボディーという会社がかつて別の映画のために作ったものなのだ。
あまりの出来の良さに今回また使われることになったということで、映画のエンドロールにはその所有者である「佐賀県零戦復元実行委員会」のクレジットがある。
この映画の撮影に先立ち、佐賀県フィルムコミッションから「あの零戦が使われることになりました」というメールをもらったのが、2012年5月21日。それから撮影が始まり、長い時間かけてCGが作られ、2013年の6月に完成して12月に公開。本当に時間と手間がかかっているな、と思う。

ということで佐賀県ともご縁のあるこの映画。
良かったか悪かったかという議論に参加するためにも、一度ご覧になってみてはいかがだろうか。


ふるかわ 拝

平成26年2月4日(火)
第549「パリからの報告」

1月25日土曜日、千葉県で地域に飛び出す公務員を応援する首長連合サミットが開かれた。僕はその代表として参加し、その足でパリに向かった。
羽田を午前1時30分に発つパリ便は、ある意味とても便利だ。夜遅くまで仕事をしてそのまま機上の人となり、パリに着くのが現地時間の朝6時30分。まる一日たっぷり仕事をすることができるのだから。
羽田空港の出発もスムーズ。偏西風が弱かったせいか予定の時刻よりも50分程度早くシャルル・ド・ゴール空港に到着した。所定のボーディングブリッジのところまで来て、さあ、ドアが開くぞと思っていたら、なかなか開かない。
「当機、予定よりも早く到着をいたしましたが、ドアのハンドリング会社との契約の関係で午前5時45分以降にならなければドアが開きません。あと数分お待ちください。」
いきなりフランスだった。

今回の僕の出張は、有田焼のセールスプロモーションだった。
エッフェル塔にある『ラ・ジュール・ヴェルヌ』は、ミシュランの星付きレストラン。オーナーのアラン・デュカスは、世界中のレストランでミシュランの星を12個とっているという有名なシェフだ。
その『ラ・ジュール・ヴェルヌ』で、1月23日からの1週間、日本の食材を使ったメニューが提供されることになり、その料理を盛り付ける器として有田焼が採用された。
これをパリのジャーナリストやバイヤーにアピールするためにレセプションを開き、ホストの僕がご挨拶をしたのだ(といっても、懸命に練習してフランス語の原稿を読んだ、という方が正しいのだが)。
スピーチのベースは事務方が作ってくれたのだが、なかなかのものだと思うので、興味のある方はぜひ見ていただきたい。
アラン・デュカス店舗「Jules Verne」における佐賀県主催の有田焼プロモーション【古川知事のメッセージ】

反応は極めて良かった。
「有田焼の写真を撮りたい」、「特集を組みたい」、「取材でぜひ一度行きたい」、「値段の交渉をしたい」など様々なリアクションがあった。
またフランスを代表する有名ブランドのスタッフからは「ぜひ有田焼を容器にして商品を作ってみたい。ただわが社は『フランス製』を売り物にしているので、いきなり有田焼では難しい。スペシャルエディシオンを作ってみると面白いかもしれない。」と言う発言があった。
なかなかの手ごたえだったということだ。

予定の時間をはるかにオーバーしてしまい、僕はレセプションを途中で切り上げ、欧州最大のインテリアの見本市「メゾン・エ・オブジェ」の会場に向かわなければならなくなった。

毎年1月と9月に開かれているこの見本市に新しい有田焼を出品しようと、奥山清行さんをプロデューサーにして商品開発を進めている。
東京ビッグサイトの4倍はあろうかという広い会場の中で、どの場所に有田焼を持ってくればいいのか、どういう動線のところに置いてもらえばいいのか、主催者と議論をし、「有田焼については是非いいところに置きたい」という前向きな話を得た。
これもまた楽しみだ。

そして月曜の昼前、僕は再び機上の人となった。
目的は機内食。パリ発東京行きの日本航空の機内食を監修しているのが、パリ在住の日本人シェフ吉武広樹氏なのだ。
パリでレストラン『sola』を経営している吉武氏は、伊万里市出身。店を始めて1年足らずでミシュランの一つ星を獲得している、若手の有望株だ。
この吉武氏が機内食の仕事を受けるにあたって出した条件が、「有田焼の器を使いたい」ということだった。
佐賀県としても、大変ありがたい申し出。日本航空とのやり取りのお手伝いをさせていただいた。通常使っている器の会社との契約など障害もあったが、何とか日本航空側の理解を得て、吉武シェフ監修の料理の一部で特別に有田焼を使っていただくことになった。
その料理と器をしっかり確認してみたかったのだ。

前菜の盛り合わせで使われている器が有田焼。

無地のシンプルなデザインのものだった。
すっきりとしていてスタイリッシュ。料理との調和が良く取れている。
裏には「有田焼創業400年」と記されていた。


料理も素晴らしかった。
ケータリングというのは材料の選び方から火の通し方、価格など制約条件がかなりあると思うが、それらを見事にクリアして、機内食のイメージを超えていた。
こういう人がパリで活躍されているのは、佐賀県民として誠に誇らしい。

吉武シェフの店は、ルイヴィトンが発行しているパリのシティガイドにも掲載されている。場所はノートルダム寺院の裏手で分かりやすいけれど、予約が取りにくいのが難点の人気店。
パリに行かれる機会があればぜひともお試しあれ。


ふるかわ 拝