2014年3月
平成26年3月25日(火)
第556「『壊死する地方都市』を読んで」

中央公論2013年12月号に掲載された「壊死する地方都市」(増田寛也氏ほか)が話題になっている。人口減少問題に警鐘を鳴らした特集だ。いや、この表現は甘すぎるかもしれない。この論文を読むと「壊死」という言葉があえて使われた理由がよくわかる。次第に身体が蝕まれていくように特に地方においては人口が減っていき、やがては地域そのものが存続できないくらいになってしまう、ということが実感として伝わってくるのだ。

日本の総人口、という点からすると問題は明確に見えてこない。というのも、ここしばらくは高齢者が増加を続けていくから、だ。その陰で若年女性の数が減り続ける、という事実が目立たなくなってしまっている。その点を増田氏は指摘する。
20歳から39歳までの女性人口(若年女性人口)は2010年から2040年までの間で大きく減少する、という。子どもを産むことができる女性の数が減っていく中で人口を増やしていくのは相当大変なことになる、というのは言われるまでもないことだろう。
この論文では、この2010年から2040年までの間に、東京一極集中などの人口移動要素が今と変わらなければ、2040年の時点で2010年当時と比べて若年女性人口が5割以上減少する市町村の数が全体の20.7%、3割以上減少する市町村に至っては81.7%と驚くほど高い予測がなされている。
僕が独自に調べてみたところ、佐賀県内の市町においても80%の市町が3割以上減少するようだ。
2010年から2040年までの間で日本の若年女性人口は15,843千人から10,105千人へと36.2%減少する見込みだ。佐賀県では96,045人から64,049人へと33.3%減少する。
2012年時点では佐賀県の合計特殊出生率は1.61と高いほうだが、それでもこれだけ若年女性の数が減るということは合計特殊出生率を相当アップさせても人口減少に歯止めをかけるのは難しいだろう。

いま佐賀県は出産・育児・子育て支援策として「418(しあわせいっぱい)プロジェクト」に取り組んでいる。これは「出生数を自然体のトレンドよりも418人分増やそう」ということでやっているものだ。「これを達成できれば合計特殊出生率を0.1ポイント上げることができる」ということなのだが、とてもこれだけでは人口を維持するのには足りないということになる。

「若い人たちは東京に集っているから、日本全体としてはいいのではないか」という考え方もあるかもしれないが、東京はこどもを産みにくい、育てにくい地域なのか、合計特殊出生率は日本の中で圧倒的に一番低い。「もともと比較的子どもの数の多い佐賀県のような地方から、東京のように子どもがあまり産まれていない地域に若年女性(男性もだが)が移動していく」という現象が人口減少に拍車をかけることにつながってしまっている、とこの論文は指摘する。

この論文をべースにした質問も佐賀県議会の2月定例会で行われるなど議会の関心も高く、佐賀県では既に人口問題に関するタスクチームをスタートさせた。

本気になって人口問題を考える時期に来ていると思う。


ふるかわ 拝

平成26年3月18日(火)
第555「『ロマンシング佐賀』Premium Night!」

日曜日の夜、東京六本木で開かれていたロマンシング佐賀プレミアムナイトに出た。
4日間で5千人の動員を見込んでいたロマンシング佐賀ラウンジのイベントだったが、ふたを開けてみると、安全面などに配慮して7千人に入場制限をせざるを得ないほどの人気ぶりで、主催者側のスクウェア・エニックス社も驚いていた。
プレミアムナイトは最終日のいわばクロージングイベント。
SAGAシリーズ全体の制作の統括者である河津秋敏さん、プロデューサーの市川雅統さん、作曲家の伊藤賢治さん、イラストレーターの小林智美さん、というロマンシングSAGAファンにとってはたまらないメンバーが大集合してのトークショー。そこに僕も参加をしたというわけだ。
会場の六本木ヒルズカフェ/スペースは抽選で招待された100人のお客さんで満員。
会場に入った瞬間、溢れんばかりのお客さんの幸せそうな表情が目に入ってきた。
ファン垂涎のチケットが当たったのだから、確かにそういう気持ちになるのだろう。

実は、佐賀県とロマンシングSAGAのコラボは、今から20年ほど前にスクウェア・エニックス社から佐賀県に相談されたがお断りし、逆に僕が知事になったばっかりの頃に佐賀県から相談して断られたという経緯があったのだが、今回ロマンシングSAGA 25周年記念のイベントを佐賀県と何かできないか、というので市川さん自ら電話番号を調べて佐賀県の観光連盟に電話をされたらしい。
電話を取ったのはアルバイトの職員だった。その職員はすぐ専務理事に相談をし、専務理事から佐賀県のコラボレーション事業FACTORY SAGAに話をつなぎ、FACTORY SAGAの責任者が市川さんと話をして、このコラボがスタートしたということだった。
最初に電話を取った人がちゃんとこの話を専務理事まで上げ、専務理事がFACTORY SAGAに話をつないだ、というのがポイントだと思う。

この「ロマンシングSAGAと佐賀県のコラボレーションが始まる」という告知をした翌日、僕は政府のある会議に出席した。そこで隣の女性の委員(大学教授)から「古川さんすごいですね、ロマンシング佐賀!」と声をかけられた。
女性の大学教授とロマンシングSAGA、が結びつかなかったので「えっ」と驚いていたら、彼女が恥ずかしそうに教えてくれた。
「私その世代なんです。」
もちろん恥ずかしく思うようなことではない。実際に六本木ヒルズの会場は、半分ぐらいは女性だった。
ゲームをやるのは男子、というイメージが僕の中にはあったが、どうやらそれは間違いのようなのだった。

今回のイベント、ロマンシングSAGA関連のグッズと合わせて佐賀県の特産品を売るコーナーも作られていた。その目玉の一つが、SAGAシリーズのキャラクターの有田焼の皿だった。

その皿を作ってくださったある窯元の当代の言葉が印象に残った。
「今回のロマンシングSAGA 25周年のイベントで作った皿。これは私が焼きました。ただ、息子が手伝ってくれました。息子は有田焼とロマンシングSAGAとがコラボした、ということに驚いたようです。この仕事に未来があると思ってくれたようです。」
彼は言葉を継いだ。
「だから、次のロマンシングSAGA 50周年イベントのときは、息子が焼きますから!そのときは必ず声をかけてくださいね。」

今回のイベント、新しい有田焼の後継者も生み出すことができたようだ。


ふるかわ 拝

平成26年3月11日(火)
第554「ソフィアデフリンピック金メダル 金持選手おめでとう」

先週、唐津出身で現在大阪体育大学在学中の金持義和(かなじ・よしかず)選手の厚生労働大臣表彰の祝賀会が開かれ、僕もお祝いに駆けつけた。

彼は2013年にブルガリアのソフィアで開かれたデフリンピック(世界聴覚障碍者競技大会)の水泳競技で金メダル1個、銀メダル2個を獲得し、その他の世界レベルでの活躍と相まって今回の表彰となったのだ。
障碍者のオリンピックというと現在開催中のパラリンピックというイメージが強いが、あれは身体障碍がメインで聴覚障碍は対象外になっている。また、知的障碍のオリンピックはスペシャルオリンピックスといって別に存在する。つまり、障碍に応じてパラリンピック、スペシャルオリンピックス(これだけはスがつきます。)、デフリンピックと三種類の世界大会がある、ということだ。

実はデフリンピックの歴史は古く、1924年(大正13年)にスタートしている。一方パラリンピックは、その前身となるストーク・マンデビル競技大会が第二次世界大戦後の1948年(昭和23年)、戦争で身体的に損傷した兵士たちのための競技大会としてスタートしているから、こちらのほうがよほど歴史的には新しいことになる。
インターネットの「はてなダイアリー」には「聴覚障害者は他の障害に比べて身体能力が高いことから、パラリンピックへの出場が認められていません。そのため、デフリンピックがあるわけです。」と書いてあるのだが、もともとデフリンピックが存在していたからパラリンピックにカテゴリーを作る必要がなかった、というのがより正しいのではないだろうか。

金持選手は小さいころから水泳に才能を発揮していて、健常者と一緒の大会にずっと出場していた。現在も大学の水泳部の選手として健常者に交じってトレーニングを積んでいる。
彼の場合、健常者と一緒の大会に出るときに大変なのがスタートだったという。
多くの大会においてスタートは号砲やブザー音で行われているわけだが、彼にはその音が聞こえない。スタートの合図がわからないと、どうしてもフライング気味か遅れ気味になる。彼の水泳競技の歴史の半分はフライングとの戦いであったと言ってもいい。かといって、相手が出たのを見てスタートをすれば、その分だけ遅れる。その中で彼は健常者に交じって佐賀県高校総体の背泳ぎで優勝した経験もあり、いまはインカレの決勝に残ることを目指している。それと聴覚障碍者のカテゴリーでの世界一を。

彼は昨年の12月に厚生労働大臣から表彰されたが、これがもし新年度であれば文部科学大臣からになる。
そう、スポーツの所管が健常者・障碍者に関係なく文部科学省に一元化され、やがてスポーツ庁が担当することになるのだ。佐賀県が2012年度から障碍の有無に関係なく様々な方が行うスポーツの所管を文化・スポーツ部に一元化したのは、その先取りだった。
そして金持選手のように健常者とか障碍者とかの垣根を越えて活躍している選手たちがいる、という事実はとても雄弁だ。
佐賀県は世界でトップレベルの活躍が期待できる選手を「さがんアスリート」と認定して強化費などを支援している。そこには障碍者とか健常者とかを区別する考え方はない。もちろん金持選手も「さがんアスリート」の一人だ。
こうしたことが僕が唱える「スポーツのユニバーサルデザイン(UD)化」の一つの表れ、ということだ。

金持選手が活躍したソフィアデフリンピックは2013年。次回は2017年にトルコのアンカラで開催される。
その4年後はどうもまだ決まっていないようだ。
2021年に佐賀県でデフリンピック、なんてのはどうだろうか。単なるイベントにするのではない。この大会の開催に向けて障碍のある人もない人もスポーツを楽しむことができる環境を整えていく、ということに意味を見出す、ということだけど。


ふるかわ 拝

平成26年3月4日(火)
第553「チームラボと佐賀 巡る!巡り巡って巡る展 スタート!」

チームラボといえば佐賀県では随分なじみのある名前になった。

デジタルアートの旗手、猪子寿之氏の率いるウルトラテクノロジスト集団が繰り出す作品群は、いつも僕たちをわくわくさせてくれる。

もともとは国際リニアコライダー(ILC)の紹介動画の制作を福岡県・佐賀県からチームラボに依頼したのがきっかけだった。
ILCの誘致はいまちょっと止まった状態になっているが、この動画はとても評価が高く、第17回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門の審査委員会推薦作品に選定されたりした。少なくとも紹介動画の世界では完全に僕ら(脊振地域)の勝利だったのは間違いない。

その後、去年10月には佐賀城本丸歴史館でプロジェクションマッピングを敢行。本格的なデジタルアートは佐賀県内で初めてであったにも関わらず3日間で9,300人という大動員を記録。あまりに多くの観客が押し寄せ、観ることのできない方が続出、ということで急きょ追加公演を実施するほどの人気イベントとなった。

実は、このチームラボ。国内ではたとえば2011年のNHK紅白歌合戦で嵐のスペシャルメドレーの演出を担当したりもしているが、シンガポールビエンナーレ2013出展や台湾、香港でのプロジェクト展開などむしろ海外での活躍が多い。その彼らに、最近気に入ってもらっているのが佐賀県なのだ。

ということで今回、彼らがこれまで公表してきた作品をアップデートさせ、また一部は本邦初公開、一部はこの世に初公開などさまざまな作品群を一堂に会し、ではなく、一堂に会さず、県内4か所の美術館、博物館で展示することにしたのだ。
具体的には、佐賀県立美術館(佐賀市)、佐賀県立宇宙科学館(武雄市)、佐賀県立九州陶磁文化館(有田町)、そして佐賀県立名護屋城博物館(唐津市)。それに特別同時開催として武雄市図書館。

4か所を巡る、ということで「巡る! 巡り巡って巡る」 と「巡」の文字が4回使われている、ということだ。あたかも聖地巡礼のごとく4か所巡ってください、という気持ちが込められている。
それに武雄市図書館がプラスワンで入り、色を添えてもらっている、ということだ。

要するにどんなものなのか。この動画をご覧いただきたい。
チームラボと佐賀 巡る!巡り巡って巡る展

でも、この動画だけではあの迫力は伝わらないと思う。
3月22日土曜日までなので、ぜひ足を運んでみてください。

チームラボの作品は「鑑賞」ではなく「体験」するもの。
かつて、いまや近代絵画とか現代美術と呼ばれるものが生まれたように、新しい芸術がこの時代に生まれつつあるというその誕生の瞬間を共有することができる、と言ってもいいくらいだ。

いったい何のことかって。

まあご覧あれ。4か所巡るとお遍路さんよろしく素敵なプレゼントがついてくる、というし。


ふるかわ 拝